ピロリ菌除菌について
2013年2月、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に対する除菌の保険適用が認められました。これにより、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のないヘリコバクターピロリ菌(以下ピロリ菌)による慢性胃炎の患者様全てが、医療保険を使って除菌治療を受けることができるようになりました。
ただし保険診療を行なうには、必ず胃カメラを受けて、ピロリ菌感染性胃炎(萎縮性胃炎)の存在を確かめる必要があります。
胃カメラで慢性胃炎(萎縮性胃炎)が指摘され、最後の胃カメラから1年以内であればピロリ菌除菌のための胃カメラを省略することは可能です。いつ、どこの医療機関で胃カメラを受けたか、どのような検査結果であったかを、分かる範囲でお調べいただき、医師にお伝えください。1年以上経過している方は、必ず胃カメラをお受けになってください。
※以前の検査や検診などでピロリ菌の存在が確定している方は、再度ピロリ菌感染を調べる必要はなく、直接除菌治療を行うことができます。
(この際でも、最後の胃カメラから1年以上経過している場合は、先に胃カメラを行い、胃がんがないことを確認されることをお勧めいたします)
ピロリ菌の診断・治療の流れ
ピロリ菌の診断方法
1.まず胃カメラを受けていただきます。
胃カメラで慢性胃炎(萎縮性胃炎)の所見があることを確認します。
慢性胃炎の無い方は内視鏡上ピロリ菌はいないと判断されます。ピロリ菌の検査は行なわず、除菌する必要もございません。
2.次にピロリ菌の感染を以下のいずれかの方法で確認します。
- 迅速ウレアーゼ試験(胃カメラのときに行ないます)
- 鏡検法(胃カメラのときに行ないます)
- 培養法(胃カメラのときに行ないます)
- 血中抗体測定(採血で行ないます)
- 尿素呼気試験(絶食で息を調べます)
- 糞便中抗原検査(検査当日の便を採っていただきます)
当院では胃カメラの際ピロリ菌の存在が疑われれば、胃カメラの検査中に迅速ウレアーゼ試験、鏡検法の2つの検査を行い感染の有無を調べています。
除菌治療の方法
除菌の方法は、抗生剤と胃酸分泌を抑える薬の1週間連続の内服です。
1次除菌療法(7日間)
2種類の抗生剤と1種類の胃薬を、1週間休まずに朝食と夕食後に内服します。
内服を終えられましたらご来院頂き、副作用の有無などをお聞きし、除菌判定の時期を定めます。通常は除菌療法の内服を終えてから1ヶ月以上あけて除菌判定いたします。
除菌判定には2種類の検査を組み合わせ行っております。
(当院では主に、尿素呼気試験・糞便中抗原検査で確認しております)
1回目の除菌で約80%の方が除菌に成功します。約20%の方は菌が残ってしまいますので、2回目の除菌治療を行います(2次除菌療法)。
※アルコールや喫煙が多いと除菌率の低下が懸念されますので、なるべく飲酒の機会のない1週間を選んで行うといいでしょう。
※薬の副作用で軟便・下痢・味覚異常が起こることがあります。程度が軽ければ内服を続け、発熱・腹痛を伴う下痢・便に血が混じるなどの強い副作用があれば、医師と相談するか自己判断で中止してください。
2次除菌療法(7日間)
2回目の除菌では抗生剤の種類を一部変えて、1次除菌と同様に1週間続けて内服します。
以降は1次除菌と同様に、1ヶ月経過したのちに除菌判定を行います。
2回目でさらに80%以上の除菌率がありますので、計2回治療すると除菌治療を行った方全体の95%程度の除菌が得られると考えられています。
※2次除菌中でのアルコール摂取は必ず避けてください。
※1次除菌同様の副作用がありますのでご注意ください。
2回の除菌で不成功の方は・・・
現在保険で認められているピロリ菌除菌は2次除菌までとなっております。3次除菌以降に関しては、さまざまな専門医療機関で研究が進められていますが、今のところ確定した候補は報告されておりません。
2次除菌まで除菌不成功の方は、専門医療機関での自費診療による3次除菌を行なう方法がありますが、当院では行っておりません。除菌せずにしばらくは経過観察するという方法もありますのでご相談下さい。
注意事項
ピロリ菌除菌の治療は、最終的には胃がんの予防が目的です。除菌成功後も胃がんになるリスクはある程度残ります。除菌成功後も必ず年1回の胃カメラで、胃がんの有無を確認されてください。
除菌が成功した患者様の一部に、逆流性食道炎が報告されています。もともと逆流性食道炎でお悩みの方は、除菌前に医師と御相談下さい。