京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院 京都市上京区
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「外来ベースアップ評価料」の算定について

2025年1月27日

寒い日が続いております。
インフルエンザもコロナも少し下火になってきましたが、
それ以外の風邪の患者様は依然として多いです。

皆様も引き続きご用心ください。

 

 

さて、
今回は診療報酬についてのお話です。
当院での皆様の窓口負担にも関係するお話ですので、
お時間のある時にご一読いただければ幸いです。

 

昨年6月の診療報酬改定で、
国は診療報酬を全体で+0.8%で改定することと決めました。

つまり次の診療報酬改定までのこの2年間は、
同じ診療を行った場合で0.8%売り上が増えるとの設定です。
一見プラスの改定で医療機関は得していると思われるかもしれません。

しかし昨今の円安を背景とした物価上昇や光熱費の上昇、
また人手不足や最低賃金の上昇などで人件費も格段に上がっており、
世の中の物価上昇(3~5%くらい?)より低いわずか0.8%の上昇では、
当然医療機関の最終的な利益は減少します。

そういう意味では値段を上げられない、
ラーメン屋さんなどの飲食店と同じ構図となります。
当然医療機関の経営状況は悪化することが考えらます。

国が医療機関をこのような状況に置くことにより、
医療機関は収益が減少するため、
看護師など医療従事者の給与を昇給させることが難しくなります。

しかし国は賃金上昇を求めています。
要求と実際に乖離がある状況が生まれています。

 

一般の企業は企業努力や物価上昇に伴う価格改定などで、
ある程度収益をコントロールできますが、
医療機関は診療報酬として国が決めるのでコントロールできません。

そうなると国側の、
「何としても社会保険料は抑制したい」という思惑と、
「医療従事者の賃金はあげてもらいたい」という思惑に
どうしても無理が生じます。

そこで様々な知恵を駆使して考案されたのが、
この「外来ベースアップ評価料」という
新たな診療報酬の項目になります。

 

本来なら国は職員のベースアップに使ってもらうために、
初診料、再診料をなどの診療報酬自体を増やして、
その増資分から医療機関に賃金アップを求めればいいのです。

単純に診療報酬を世の中のインフレに合わせて
アップすれば済むだけの話です。
医療機関も人手不足に困っているので、
必要があればベースアップも自発的に行うでしょう。

しかし財源不足を盾に社会保障費の削減を言い続けている国にとっては、
診療報酬の根幹の部分を増やす方向には「絶対に」動きたくありません。
つまり医療機関の収益となる形にはしたくないのだと思います。

初診・再診料などの点数を上げずに賃金を増やすにはどうするか。

そこで、別枠で「ベースアップ評価料」という項目を作り、
そこで得た増収はすべて職員の賃上げにしか使ってはいけないという、
とても回りくどい、今までにない点数を新たに設けました。

 

具体的には、
ベースアップ評価料を算定することを申請すると、
医療機関は患者様に初診に6点(60円)、再診2点(20円)の
ベースアップ評価料というものをこれまでの診療報酬に加えます。

皆様の窓口負担としては、3割と考えると、
初診で18円、再診で6円ご負担が増えるということになります。

こうすることにより医療機関は規模にもよりますが、
月に数万円収益を得ることができます。
その費用を原資として職員のベースアップを行うというものです。

医療機関はその数万円を、
看護師をはじめ職員のベースアップに使用します。
決して医療機関の手元に残してはいけないことになっています。

国としては医療機関がその費用を
ベースアップに充当されたことを確認しなければなりません。
そのためとても複雑な申請様式を作り上げました。

そのベースアップ評価料で得た数万円の増収分を、
どのように職員に分配するのか、どれだけ引き上げるかなどの、
計画書を作成し申請しないといけないのです。

それがあまりに難解ですので、
忙しい一般の医療機関の院長や事務の者が、
片手間に申請することはほぼ不可能です。

仕方なく申請を顧問税理士さんや顧問社労士さんに依頼すると、
その作業費用がベースアップ評価料を上回るケースも出てきます。
それではベースアップ評価料が手元に残りません。

当院も顧問社労士さんに有償でいいのでとお願いしましたが、
まず制度内容を理解するのが困難なこと、
また申請の内容が複雑で作業が多すぎると断られました。

プロでも腰が引けるような難解複雑な申請書類です。
病院の医事課などの専門家がいない一般のクリニックは、
申請したくてもできないところが多く出ていました。

本来は全ての医療機関が利用可能な制度ですが、
実際申請できたのは20%くらいだそうです。

 

その後医師会や関連団体からの働きかけで、
9月には制度の申請がやや簡素化されました。
私も再度挑戦しましたが、まだまだ複雑でした。

やはり簡素化後も申請は少なかったようです。

そしてこの1月に大幅に簡素化されました。
これだけの項目で良かったのかと半ばあきれるくらい、
申請内容が少なくなりました。

そして当院もようやく申請することができました。
これで職員のベースアップが行えるようになりました。

 

この様な理解に苦しむ制度の設計は、
国の優秀な官僚の方が自己陶酔的に作られているためか、
恣意的でとても使いにくい制度となっています。
(勝手な想像ですが)

しかもこの制度もいつまで続くのか、
実は定かではありません。

ベースアップ評価料を申請する医療機関が少なければ、
国は「それだけ医療経営は順調なのですね」と解釈を捻じ曲げ、
次の診療報酬改定では消滅することになりかねません。

大体の国のやり方は、
忘れたころにステルス的に制度を縮小させ、
段階的に補助を削減させるのが通常です。

 

残念ながらベースアップ評価料のみでは、
職員全体のベースアップにかかる費用には足りないのですが、
無いとますますベースアップは難しいので申請しました。

2月1日からの診療対しては、
皆様の窓口負担からベースアップ評価料をいただきます。

3割負担の方で初診で18円、再診で6円と、
金額的にははそれほど大きくありませんが、
料金が上がることには変わりありません。

医療の現場から離職者を出さないことが、
皆様に対するサービスの維持につながります。
何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。

そして頂いた費用で職員の昇給を行い、
医療の質を高める形で患者様に還元できるように、
職員一同努めてまいりたいと考えております。

また何かお気づきの点がございましたら、
遠慮なく仰ってください。
今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

吉岡医院  吉岡幹博