2024年11月27日
11月も下旬となり、
今年も早くもあと1月となりました。
12月は何かと気ぜわしいですが、
年末までしっかり予定を立てて、
できるだけ焦らずに乗り切りたいと思っております。
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秋は学会シーズンです。
先日消化器関連学会の教育講演で、
膵がんの診断についての講演を視聴しました。
その際に、
最近すい臓がんの早期発見につながる、
新たなバイオマーカーについて報告がありました。
バイオマーカーとは、
生物の体内に存在する物質や生理学的指標で、
疾患の有無や病状の変化、治療の効果などを
評価するための客観的な指標です。
いわゆる腫瘍マーカーもバイオマーカーの一つで、
腫瘍マーカーはがんを対象として主に血液から調べますが、
バイオマーカーはがんだけではありません。
より広い疾患を対象として、
血液だけでなく遺伝子なども扱います。
従来膵がんの腫瘍マーカーとしては、
CA19-9 が用いられていましたが、
擬陽性が多く、早期がんでは上がりにくく、
信頼性や数値に対する評価が難しい面がありました。
皆さんご存知かと思いますが、
膵臓がんは罹患率と死亡率がほぼ同じという
非常に予後の悪いがんです。
大きさ2㎝以下の早期で発見しなければ、
手術での治癒切除が難しくなり、
手術できたとしても再発のリスクが高まります。
従って如何に早期発見するかが
膵がんでは重要となります。
今回学会の教育講演での話題に上がっていたのが、
「Apo A2-i(アポリポプロテインA2アイソフォーム)」
という血液中に存在するタンパク質です。
Apo A2は主に肝臓で合成され、
リポタンパク質の一部として脂質の輸送に関与します。
膵がんや膵がん前がん病変であるIPMN患者では、
アイソフォーム(apolipoprotein A2-isoforms; apoA2-i)の量比が
健常者の血漿濃度に比べて低下することが発見されました。
2センチメートル以下膵がんを発見する感度は、
CA19-9単独では33.3%であったものが、
APOA2アイソフォームを加えると66.7%に上昇しました。
ApoA2-i Indexは膵がんのいずれのステージでも
健常者に比較して血漿濃度が減少したことにより、
早期の膵がんの発見に寄与する可能性があります。
私もこのマーカーの存在は今回初めて聞いたので、
詳細はこれから勉強しようと思っております。
このマーカーは今年4月に
既に保険収載されているとのことで、
保険診療で測定できるとのことです。
ただCA19-9のように気軽に検査できるものではなく
まだまだ始まったばかりで縛りが多くありました。
以下その具体的な内容です。
・本検査を実施するに当たっては、
関連学会が定める指針を遵守するとともに、
膵癌を疑う医学的な理由を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
(イ) 関連学会が定める指針に基づき膵癌の高度リスクに該当する者。
なお、本検査を実施する患者が 3月以内にCA19-9検査を行われており、
CA19-9の値が37.0U/mL以上である場合には、本検査は算定できない。
(ロ) 関連学会が定める指針に基づき膵癌の中等度リスクに該当する者であって、
癌胎児性抗原(CEA)検査の結果が陰性であり、
CA19-9 値が37.0U/mL以上かつ100U/mL以下の者。
(ハ) 関連学会が定める指針に基づき膵癌のリスク因子が3項目以上該当する者であって、
癌胎児性抗原(CEA)及びCA19-9 検査の結果が陰性である者。
・アポリポ蛋白A2(APOA2)アイソフォームと、「2」の癌胎児性抗原(CEA)、
「7」のDUPAN-2又は「14」のSPan-1を
併せて測定した場合は主たるもののみ算定する。
・本検査をアの(イ)に対して実施する場合は CA19-9の測定年月日及び測定結果を、
アの(ロ)及び(ハ)に対して実施する場合は癌胎児性抗原(CEA)及び
CA19-9の測定年月日並びに測定結果を、診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
以上となります。
今回の研究成果により、
40年ぶりにCA19-9と同等以上の性能を持つ腫瘍マーカーが
実際の臨床現場で健康保険により利用できるようになりました。
既存の膵がん腫瘍マーカーであるCA19-9とは原理が異なるため、
組み合わせることで膵がんの診断に貢献できると考えられます。
私もも今後どのような患者様に検査を行うか、
具体的に検討していきたいと思っております。
吉岡医院 吉岡幹博