2024年10月27日
1日の寒暖差が激しいこの頃ですが、
皆様はいかがお過ごしでしょうか。
最近、熱はでない程度の風邪で、
咳が止まらないという患者様が増えています。
発熱があればコロナやインフルエンザも調べますが、
熱もなく日数も経過していることも多いので、
検査をせずにひとまず一般的な治療を行います。
季節の変わり目です。
皆様もちょっとした風邪にご注意ください。
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さて、
当院では胃カメラ、大腸カメラといった
内視鏡検査を行っています。
2010年に開業してから、
当院の内視鏡はずっとオリンパスです。
消化器内視鏡には大きく2大メーカーがあり、
オリンパスと富士フイルムで
日本のシェアをほぼ分け合っている状態です。
私が開業するまで勤めていた病院でも、
ほとんどがオリンパスを使用していましたので、
私も自然とオリンパスに慣れておりました。
開業したころはオリンパスが主流で、
どちらかと言えば富士フイルムは、
スペックが劣る廉価内視鏡というイメージでした。
その後富士フイルムがヘルスケア部門に
力を入れるようになった結果、
ものすごいペースで機器の改良、開発が進められました。
そしてここ数年に関しては、
画質も操作性もオリンパスに追いついた印象があります。
最新の病変検出やポリープの診断を行うAI技術は、
富士フイルムはオリンパスの一歩前を行っていると思うくらい、
技術的な開発が進んでいました。
私の周りでも長年オリンパスを使用していた医療機関が、
富士フイルムに乗り換える事例もちらほら聞かれ、
その方に伺っても概ねいい感触を持っておられる様です。
ということで、
私も富士フイルムの技術がどのようなものか、
実際使用してみたいと思っておりました。
そこで富士フイルムの方にお願いをして、
デモをしていただくことなりました。
デモをしてもらうのは結構大掛かりで、
単に内視鏡を付け替えればいいものではありません。
オリンパスの本体には富士フイルムのカメラは
接続できない様になっています。
もちろん逆もしかりです。
そのため本体から富士フイルム製に取り換えると、
電子カルテと連動する画像ファイリングシステムとも、
新たに接続しなければなりません。
診療日には作業する時間がありませんので、
先週木曜日の休診日に行い、金曜日土曜日と
富士フイルムの内視鏡で検査を行いました。
まず戸惑ったのは画像の見え方が、
オリンパスのものと全く異なるところです。
画像の作り方が違うのです。
どこかのっぺりとした絵画のような画像で、
大いに違和感を感じました。
あまりリアリティがないように思えました。
これは慣れの問題なのでしょうか。
頭の中(脳)が混乱しているように感じました。
それでも画質自体は良いので、
細かいところまで解像度は高く判別できますので、
もちろん診断は可能です。
そしてAIです。
内視鏡を動かしている間に、
病変の可能性のあるものをとらえると、
四角で囲って知らせてくれます。
これはなかなか的確です。
特に大腸カメラの時には、
ポリープの疑いのあるものを検出するのですが、
中には見落としてしまうような小さな病変まで
拾い上げていました。
もちろんポリープに見えるような粘膜の隆起や、
ちょっといた泡も検出しますが、
近寄って観察すると違うと判断してくれます。
リアルタイムの動画中でこのような画像処理が行われ、
画像がカクカクと遅延することもなく非常に滑らかに
病変が検出されることにとても驚きました。
(存在診断)
そしてさらにすごいと思ったのは、
拡大して病変の表面構造を映し出すと、
切除すべきものか判定してくれるところです。
(質的診断)
これは普段から我々も拡大して判断していますが、
それをAIがやってくれるというものです。
中には迷うポリープもありますので、
これは参考になるかもしれません。
2日目になると不思議なことに、
富士フイルムの画像が比較的ナチュラルに
みえるようになっていました。
目が慣れたというのか、
前日に富士フイルムの画像が載った症例集をもらい、
頭の中のイメージを替えられたのかもしれません。
ちょうど、サングラスをかけた時に、
最初は全体が暗く見えていたものが、
やがてその色に頭が慣れてくるというものがあります。
おそらくそのようなものなのだと思います。
今週水曜日までデモ機で検査を行うのですが、
富士フイルムの画像に慣れていると、
今度はオリンパスに戻したときに
また違和感が出るのではないかと思っています。
ちょうどサングラスを外した時に、
世界が白っぽく感じるようにです。
医療機器はどんどん高度になっていき、
それを扱う医師がその機能に対応できなければ、
せっかくの技術を生かしきれなくなります。
ちょうどハイスペックなスマホを持っていても、
その機能を十分に使いこなせないのと同じです。
(私もその一人ですが…。)
その点では常に新しいものに触れ、
その中で知識や技術を高めていかなければ、
取り残されてしまうことになりかねません。
今回のデモでいろいろ気づかされることもあり、
医療機器も知識も常にアップデートする必要が
あると感じました。
吉岡医院 吉岡幹博