京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院 京都市上京区
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内痔核の治療は手術か硬化療法か

2024年7月27日

ようやくうっとうしい梅雨が明けたと思えば、
今度は突然の豪雨に悩ませられます。

連日暑さも厳しく、
過ごしにくい毎日が続いております。
皆様も体調管理とお天気にお気を付けください。

 

 

今日は痔のお話です。

皆さんは痔には内痔核、
外痔核があるのはご存じでしょうか。

内痔核は直腸の粘膜が膨れてできる痔で、
外痔核は肛門管(肛門が筋肉で閉まっているところ)と
肛門上皮にできた痔のことを言います。

痔の治療で何らかの処置や手術を要すのは、
内痔核の方です。
外痔核は痛みは強いですが、
基本的に軟膏などで治すことが多いです。

治療対象となる内痔核は、
排便時などに肛門の外に飛び出す脱出製内痔核と
肛門から出血する出血性内痔核がメインです。

 

その内痔核ですが、
治療には大きく分けて二つの方法があります。

硬化療法と切除です。

 

硬化療法というのは、直接痔に注射をして、
その薬液の作用で痔を縮小硬化させるものです。

硬化療法にはパオスクレ―とジオン注があります。

パオスクレ―は
アーモンドオイルと5%フェノールを混ぜたもので
痔核の血管をつぶし出血を抑える硬化療法です。

主に出血性内痔核に使用しますが、
脱出性内痔核にはあまり有効であありません。

ジオン注は
硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸の混合物です。
これらの成分が痔核を硬化させることで、
出血や脱出を防ぎます。

主に脱出性内痔核に使用し、
今回のブログ内での硬化療法は
このジオン注について説明しています。

 

切除手術というのは昔からある方法で、
手術室で下半身麻酔などを行ったのち、
電気メスなどで痔核を切除し縫い合わせるものです。

内痔核治の手術は現在は結紮切除という手術が行われ、
内痔核治療の標準治療となっています。

手術は昔から行われている痔の治療法ですが、
ジオン注はここ10数年前に行われるようになった、
比較的新しい治療法です。

ジオン注が行われるようになった頃は、
手術に匹敵するような高い有効性を示し、
標準治療とされた手術と遜色ないのではと考えられました。

ジオン注は単独で行う場合には、
主術に比べ治療時間も術後の痛みも少なく、
また日帰りで行えるのも大きなメリットです。

この治療の効果が手術と同等のものであれが、
今後手術に加えてジオン注も
内痔核治療の標準治療となる可能性があります。

しかし使用し始めてから10年以上の月日が経過し、
長期的な治療成績が報告されるようになりました。

 

それによりますと、
ジオン注は10年くらい経過しますと、
約2割ほどの再発があるとのことです。

結紮切除術による再発はほとんどないことより、
ジオン注の治療成績は、
長期的には手術に劣るということが言えます。

再発が起こりやすい症例としては、
もともとの内痔核が大きい症例、
外痔核成分を伴っている症例、
肛門括約筋が緩んでいる症例
などが報告されています。

ジオン注では外痔核に対し治療できませんので、
内痔核は縮小しても外痔核は残ります。
それが再発のきっかけになっているようです

これらの症例に関しては、
治療時にジオン注で行うか手術を行うか、
またはジオン注と手術を併用で行うか、
検討する必要があると考えられます。

 

またジオン注では、
治療早期より再発する症例もあり、
薬液に対する組織の反応性に個人差があるのでは
ということも考えられています。

これは術前に予測すのは困難ですので、
実施して経過を見るしかないと思われます。

そういう意味では、
手術に比べると確実性という意味でも、
少し劣るのかもしれません。

 

ただ逆に言うと、
症例をきちんと選べば、
手術と同等の効果が得られる可能性もあります。

 

ジオン注のメリットとしては、
手軽な治療:
外来で短時間に行え入院の必要がありません。
また術後の痛みはほとんどありません。
即効性:
注射後、比較的早く効果が現れることが多いです。

また血液サラサラの抗凝固剤を内服している方。
痔が高齢者にも多い病気の中で、
抗凝固剤を内服している方にも多く出会います。

抗凝固剤を内服していると、
手術の際に麻酔も含めて支障となります。
休薬しなければならないケースが多いです。

しかしながら病状によっては休薬が難しい方も多く、
その場合は手術を見合わせることもあります。

ジオン注は基本的には
抗凝固剤を休薬することなく実施できるので、
治療の選択肢としてジオン注しかない場合もあります。

こういったところでも、
ジオン注は重宝されています。

 

最終的に手術を行うかジオン注を行うかは、
痔核の状態にもよりますが、
入院ができるか、痛みの少ない治療を重視するかなど、
社会的な状況やご本人の希望によるところもあります。

メリット、デメリットも含めて、
医師からの説明を十分に受けたうえで、
ご自身に合う治療を選択していただければと思っております。

 

なお当院では主にジオン注を行っており、
手術ご希望の方は医療機関をご紹介しております。

 

 

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