2023年12月17日
今年もあと半月となりました。
せわしない毎日かと思いますが、
皆様は如何お過ごしでしょうか。
相変わらずインフルエンザの患者さんが
非常に多くなっています。
その中にコロナの患者さんもおられます。
皆様も年末年始、
お出かけの際はお気を付けください。
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さて
今年の春に当院5階にささやかな
「待合ラウンジ」を作りました。
5階からの眺めも良くて、
中々いい空間かなと個人的に思いましたが、
部屋には飾りもなく少し物足りなさ感じていました。
利用される方に少しでも楽しんでもらうため、
何かアートは飾れないかなと考えていました。
この黒い椅子の上や、側面の壁などに、
何かあると雰囲気が変わると思いました。
カフェ風にポップなサインを入れてとか、
絵画や写真など合うものがないか考えましたが、
センスがないので正解がかわかりません。
ただ子供さんからご高齢の方まで
幅広い年齢の方が利用されますので、
皆が楽しめて飽きがこないものがいいと思いました。
そこで浮かんだのこの建物です。
皆様ご存知のと思いますが、
四条烏丸のランドマーク、「COCON烏丸」です。
この「COCON烏丸」の外壁に描かれている
緑色の大きな雲のデザインは、
唐紙の老舗「唐長」の古くからある文様です。
この唐長のことを思い出したのです。
COCON烏丸の入り口に唐長のショップがあり
以前少し覗いてみたことがあります。
さまざまな模様を取り入れた小物や装飾があり、
ここなら当院の待合ラウンジに飾るのに、
何か合うものがあるのではないかと思ったのです。
ということで、
COCON烏丸の唐長のショップを尋ねてみましたが、
以前あったお店は別の小物屋さんに変わっていました。
聞いてみると数年前に撤退されたとのことです。
ホームページを調べてみると、
現在も作品を製作し販売されているとのことでした。
ただ路面店など気軽に見に行けるところはありません。
ホームページではオーダーや相談には、
唐長オーダーサロンに行く必要があるとのことです。
さらにその場所は非公開で嵯峨某所とあります。
サロンはすべて予約制でした。
メールでコンタクトをとり予約が確定すると、
サロンの場所が知らされるというのです。
ちょっと敷居が高く感じられます。
芸術の分からないものが行っていいのでしょうか。
とりあえず気軽に作品を見てみたいだけだったので、
その時には即決はできませんでした。
唐長には充実したホームページがあり、
多くの作品を閲覧することができます。
美術館での大型の展示、商業施設から個人の店舗、
それに加えマンションや一般の自宅の部屋にまで、
さまざまな規模での作品がありました。
印象としては、
それぞれの空間に合った作品を手掛けています。
既製品ではなく一つ一つオーダーメイドのようです。
美術館に置くような重厚な伝統的な作品から、
家庭向けの優しく和やかな作品まで実に様々です。
しかもそれぞれに独特の味わいがあります。
これなら当院の待合ラウンジに合う作品も
提案してくださるかもしれないと思うようになりました。
まずは行ってみないことには始まりません。
オーダーサロンとはどんなところだろうか、
行くからにはきっちり相談に乗ってくれるのだろうか、
アトリエのように実際の作品もみれるのだろうか。
様々不安がありましたが、好奇心もあります。
費用面に関してはまたあとで考えればいいか…。
1週間ほどホームぺージで検討した結果、
思い切ってメールで連絡を取りサロンを予約しました。
当日妻と一緒に車でサロンまで出かけました。
嵯峨の奥の方の細い道の途中に門構えがありましたが、
目だった表札も看板もなく通り過ぎそうでした。
8月の暑いさなかでしたが、
土地柄かとても風情があり自然にも溶け込んだ中に
青い扉の2階建ての建物がありました。
そこで初めて唐紙師トトアキヒコさんとお会いしました。
ここで唐長の基本情報について少しだけ。
唐長本店・雲母唐長は、寛永元年(1624年)に京都で創業。
代々受け継がれた板木に一つ一つ手仕事で和紙に文様を写し取り、
江戸時代からおよそ400年間、
唯一途絶えることなく続く唐紙文化を守り伝えています。
現在は唐紙師トトアキヒコさんと千田愛子さん(第13代目当主)が
京都・嵯峨(嵐山)で唐紙文化を継承されていています。
建物の中に入り畳のお茶室のような空間に上がりました。
そこでトトアキヒコさんから唐長の歴史や文化、
現在の取り組みなどのお話を聞かせていただきました。
トトアキヒコさんはこの唐長の伝統的な文様を
様々な作品を通じて芸術として展開された方です。
最初は気難しい方ではないかと思い緊張していましたが、
お会いするととても物腰の柔らかい方でした。
2階の明るく開放的なスペースに案内されると、
多くのデザインや素材の見本が設置してありました。
そこのテーブルの上で飾りたいものの相談をしました。
実際の板木から映した多くの文様を見せていただき、
その中から気に入った文様を重ね合わせたりして、
背景の色も合わせてオリジナル作品を考えていきました。
部屋の大きさや雰囲気に合わせて、
待合ラウンジの壁3か所に合計6枚のパネルのデザインを
トトアキヒコさんと一緒に決めました。
2時間半程度の滞在でしたが、
とても和やかで楽しく、
刺激的な時間でした。
約3か月たった11月中旬に完成の報告を受けました。
そして専門の業者さんにお越しいただき、
取り付けを行っていただきました。
作品はすべてオリジナルです。
こちらで選んだ文様やその色、背景の色など、
完全なオーダーメイドになっております。
費用はそこそこ掛かりますが、
この様に長時間の打ち合わせでのオリジナルの作品を、
全て一から手作業でされることを考えると、
私はそれ以上の価値があるものと思えました。
この様な仕上がりになっております。
ソファーの上の白いパネルは
「天平大雲+若松」になります。
一見若松の文様だけに見えますが、
光の当たり方で雲の絵が浮かび上がってきます。
これらは板木の文様に色の素材に違いがでるので、
同じ背景の白色でも見る角度によって
文様のが浮き出てきたり隠れたりするものです。
左右同じパネルですが、
光のかかり方で左の方は雲の模様が目立っています。
見る角度によっても陰影が変わりそれも楽しめます。
因みにこのこの雲の文様は、
「COCON烏丸」の外壁と同じ、
「天平大雲」という文様を選んでいます。
また側面はには3つの円形のパネルを
重ねたり離したりして配置してもらいました。
この作品は小さくてとてもかわいいです。
この作品は上から「細渦」
真ん中は変わり「観世水」
下は「葵唐草」となっています。
私はこの渦巻きが好きなのですが、
シンプルなデザインなのに何か時の流れと
小さく澄んだ音が聞こえてくるような気がします。
そして奥の壁にはゴールドのとてもきれいな
四角いパネルを作ってもらいました。
これは少し大きめで73㎝の四角形です。
背景がシダで、蕨(ゼンマイ)が数本はえていて、
上には青い千鳥を飛ばしています。
私はゼンマイと千鳥の柄が癒し系で気に入っていたので、
デザインに入れてもらいたいと思っていました。
千鳥の数は私の家族に合わせて4羽にしてもらいました。
シャンパンゴールドの背景とシダの模様で
とても優雅で華やかな作品になりました。
このパネルが設置されてから、
5階の待合ラウンジは命が吹き込まれたように、
すこし明るくなった気がします。
とても自己満足な話で恐縮ですが、
皆様ももしよければ受診までの待ち時間の間に
見に来ていただければ嬉しいです。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
吉岡医院 吉岡幹博