2023年6月27日
梅雨真っただ中ですが、
皆様お変わりないでしょうか。
丁度1年の半分が終わるところです。
夏至も終わり今年も後半戦に入るのだなと思うと、
ちょっと寂しくなったりする今日この頃です。
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さて本日は、
胃薬についてのお話です。
当院は消化器内科がメインですので、
何らかの胃薬を内服している方も
多くおられれると思います。
今日は胃薬の中でも最も中心的で、
使用頻度の高い胃酸を抑えるお薬の
副作用についてご説明いたします。
対象となるお薬は、
プロトンポンプ阻害薬(PPI)という種類の
タケプロン(ランソプラゾール)、パリエット(ラベプラゾール)、
ネキシウムカプセル(エソメプラゾール)と、
P-CABという種類のタケキャブです。
よく患者様から、
このお薬はずっと飲んでいて大丈夫なのですか?
との質問を受けます。
PPIは比較的安全性の高い薬剤ですが、
様々な有害事象との関連性が示唆されています。
ただ臨床研究では証明されていません。
では、示唆されている有害事象には
どのようなものがあるのか、
簡潔にまとめてみましょう。
1.早期に出現する有害事象
これに関してはほかの薬剤と同じように、
薬剤アレルギーに起因するショック、
アナフィラキシー、血球減少、肝機能障害などです。
2.長期投薬に伴う有害事象
PPIもP-CABもプラセボに比較して、
明らかな有害事象の増加は認めていません。
半年程度の投薬は比較的安全と考えられます。
ではそれ以上の長期にわたると、
どのような有害事象か起こるでしょうか。
胃酸分泌抑制作用の観点で見ていきましょう。
⑴ 胃酸分泌抑制と無関係な有害事象
●腸炎
これは稀ですが経験があります。
PPI投与後の慢性下痢で、休薬すると良くなります。
●間質性腎炎・腎機能障害
欧米の研究で示されているそうですが、
まだ研究としては確立はされていないようです。
ただ定期的な腎機能のチェックは必要ですね。
⑵ 胃酸分泌抑制作用に関連する主な有害事象
●腸管感染症
サルモネラやカンピロバクターの発症リスクが
高まるとの報告があります。
●胃のカルチノイド腫瘍
胃酸分泌抑制からガストリンというホルモンが上昇し、
その結果カルチノイドという病気ができることはあります。
今のところ研究での関連性は認められていません。
●胃がん
ピロリ除菌後などリスクのある胃では可能性あるそうですが、
エビデンスの高い臨床試験では示されていません。
●大腸がん
研究では関連性はないとのことです。
●骨粗しょう症・骨折
カルシウムの吸収効率が低下する懸念あるも、
実際は骨粗しょう症になるとする報告と、
ならないとする報告が混在するそうです。
●肺炎
胃酸の分泌抑制で殺菌能力が低下すると、
誤嚥性肺炎などの懸念がありますが、
臨床試験では肺炎が発症しやすいとするデータ無いようです。
●胃ポリープ
PPI投与で胃ポリープ(胃底腺ポリープ)の
増加、増大が見られることはよく経験されます。
しかしこのポリープから発がんは報告はほとんどありません。
今のところ定期的な胃カメラで様子を見るようです。
こうやって見ると、
普段からよく出しているPPIやP-CABにも、
いろいろな副作用があるものですね。
比較的安全性の高い薬と考えていますが、
定期的な検査は必要と思われます。
少し分かりにくい内容だったと思いますが、
ご参考になれば幸いです。
吉岡医院 吉岡幹博