2022年8月27日
8月も終わりになり、
一時期の暑さは少し穏やかになりました。
夏特有の猛烈な雨も減ってきましたね。
長かった日照時間も少しづず短くなり、
これから秋へと向かうサインが見え隠れします。
私にとっては少し寂しい気配が漂うこの頃です。
皆様はいかがお過ごしでしょうか。
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今日は膵がんについて少しお話します。
皆様は膵がんについて
どのような印象をお持ちでしょうか。
きっと怖い病気との認識が強いと思います。
確かにその通りです。
膵がんは最も予後不良ながんの1つです。
そして最近は増加の一途を辿っています。
2020年の部位別の死亡者数では、
1位は肺がん、2位は大腸がん、3位は胃がんですが、
膵がんはその次に多い4位です。
驚かれた方もおられるかもしれません。
もっと稀だと思っておられませんでしたか?
胃がんは日本人には多いがんで、
皆様の中にも定期的に胃カメラを受け
胃がんに注意をされている方もおられると思います。
また肺がん検診、大腸がん検診、胃がん検診は
良く行われているがん検診ですが受ける機会もありますが、
膵がん検診って聞かないですよね。
がん検診は、早くに見つければ
治る可能性の高いがんに対して行われます。
膵がん検診を行っても、
現在のところ死亡率を下げるに至る、
膵がんに特化した検査がないのだと思います。
なぜならそれだけ膵がんはたちが悪いのです。
まず発見も難しいのと、
生物学的な悪性度の高さが理由です。
膵がんの全体の5年生存率は全体で13%(日本膵臓学会)、
切除例で18.8%、非切除例で3.1%、
生存期間は14.7か月、非切除例は8.2か月とされています。
つまり膵がんが見つかり何とか手術しても余命1年強、
手術できない時期で見つかれば余命は半年強の生存期間で
他癌に比べ極めて予後不良なのです。
これではいくら検診を行っても、
生存率の上昇に寄与できないのは容易に想像できます。
生存率に貢献しない検診はやる意味がないのです。
では膵がんはなってしまったらもう終わりでしょうか。
膵がんの中でも極めて早期にものに関しては、
まだ予後良好な時期のものがあります。
膵がんには早期膵がんという定義はありませんが、
早期の膵がんということで予後良好な
Stage 0またはStage IAというグループがあります。
報告では早期の膵がんの5年生存率は、
Stage 0:85.8 %、Stage IA:68.7%、Stage IB:59.7%で、
進行した膵がん(Stage IIA:30.2%、Stage IIB:13.3%、
Stage III:4.7%、Stage IV:2.7%)に比べ良好です。
しかし全体の病期の割合は、
Stage 0:1.7 %、Stage IA:4.1%、Stage IB:6.3%、Stage IIA:8.2%、
Stage IIB:13.5%、Stage III:18.9%、Stage IV:47.2%と
早期の占める割合はわずかです。
従って早期の診断をいかに増やすかということが、
膵がんの予後改善に向けて重要となるのです。
0期:がんが膵管の上皮内にとどまっている(非浸潤がん)
(出典:日本膵臓学会編「膵癌取扱い規約2016年7月〔第7版〕、金原出版)
ではどのようにして
早期の膵がんを発見すればよいのでしょうか。
これは本当に難しい問題です。
その方法としては、
膵がんの危険因子を抽出し、
その危険因子をもとに検査を進める方法があります。
画像診断の進歩と共に早期発見の膵がんは
増えつつあるそうです。
今回のブログでは膵がんがいかに予後不良か、
そしてその中でも早期の膵がんに関しては、
比較的予後良好であることをお示ししました。
しかし頻度が極めて低く、
大半は進行した状態になり発見されることも
事実としてあります。
次回のブログでは
この早期発見の方法について、
最近の取り組みを紹介したいと思っております。
吉岡医院 吉岡幹博