2022年5月7日
GWもあっという間に終わりました。
皆様はどこかお出かけされましたでしょうか。
私は家族で旅行に出かけましたが、
天気も良かったので
とてもいい気分転換になりました。
残念ながらこの先しばらくは祝日はありません。
皆様もこれから迎える暑い季節に向けて
体調管理等にお気を付けくださいね。
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さて今回は、
大腸憩室症についてお話しします。
「憩室」は「けいしつ」と読みます。
あまり世間一般では聞きなれない単語と思います。
憩室は消化管にできる、
消化管の壁の弱い部分が外側に向かって
小さな袋状に突き出したところのことを指します。
食道、胃、十二指腸、小腸にもできますが、
大腸にできるのが一般的です。
憩室炎や憩室出血といった病気も、
大腸で起こることがほとんどです。
憩室は腸管内の圧力が上昇することにより、
腸壁の弱い部分がポコッと外側に突出することで
起こると言われています。
先天的のものもありますが、
多くは後天的にできます。
従って病気を持っている人の割合は、
40歳以下では10%以下ですが、
50歳代では30%、70歳代では50%、
80歳以上になると60%と年齢とともに増えていきます。
大腸カメラを日々やっていると、
よく遭遇する極めて普通の病気ですが、
検査中に「ここに憩室がありますね」と説明しても、
多くの患者さんは「はい?」となります。
あまり聞きなれない病気であることと、
私が「ケイシツ」とはっきり発音するのが苦手ということもあり、
「休憩の憩に教室の室です」と言葉から説明します。
実際の写真はこちらです。
矢印が憩室です。
青矢印のところは、
憩室に便が挟まっているところです。
単発の方もおられますし、
この写真の方のように
ポコポコといっぱいできている方もおられます。
そんな憩室が引き起こす病気として多いのが、
憩室炎と憩室出血です。
憩室出血は、
圧力や炎症などの刺激で憩室内の血管が切れて
出血することにより起こります。
腹痛は伴わないことが多く、
多量の鮮血便が主な症状です。
自然に止まることもありますが、
出たり止まったりを繰り返すこともあります。
抗凝固剤を内服中の方は出血が止まらず
大量の血便と共にショックになる方もおられます。
出血が続いているときは緊急で大腸カメラを行い、
出血原となっている憩室が判明すれば、
クリップ等で憩室を閉鎖し止血を試みます。
内視鏡で止血困難な場合や、
大量の出血が続いていて命に係わるときには、
カテーテルを用いて血管造影検査を行い、
出血点がわかれば血管を詰めて止血します。
中には出血を繰り返すこともあり、
厄介なこともありますが、
命にかかわることは稀だと思います。
次に大腸憩室炎でですが、
これは普段外来診療を行っていても、
しばしば遭遇する病気です。
憩室の膨れたところで菌が繁殖し、
炎症を起こすことで発症します。
憩室は上行結腸とS状結腸に多いので、
発症する部位も右下腹部と左下腹部が多いです。
上行結腸で起こった場合は、
その近くで起こる虫垂炎との鑑別が
必要となることがあります。
エコーやCTで痛みのある部位に、
炎症を伴った腸管壁があれば診断がつきますが、
エコーではわかりにくいこともあります。
治療は基本的には抗生剤投与と
腸管の安静になります。
軽症の場合は経口の抗生剤と、
食事は消化のいい腸管に負担のかからないものを
少量ずつ摂ってもらいます。
中等症になると点滴の抗生剤と、
水分のみで絶食が必要になります。
場合によっては入院が必要です。
高度の炎症を伴い膿がたまったり、
腸の壁が破れて腸管内容物や膿が漏出すると、
穿孔性腹膜炎という重篤な状況となり、
入院、手術が必要となることもあります。
穿孔した場合はなかなか大変で、
ご高齢の方や基礎疾患のある方は、
場合によっては命に係わることもあります。
憩室炎は早めの対処が必要ですので、
いつもと違う腹痛を感じた時には、
医療機関で相談されてください。
また大腸カメラで憩室を指摘されている方は、
憩室炎や憩室出血を起こすことがありますので、
何か症状を感じた時には憩室によるものか考えてみてください。
食生活の欧米化に伴う食物繊維摂取量の減少や高齢化社会、
また大腸内視鏡検査を受ける機会の増加などに伴い、
大腸憩室症は日本でも増加する傾向にあります。
普段は気づいていないけれど、
お持ちの方も多いと思います。
診断は大腸カメラが最も確実です。
憩室炎を発症されているときには大腸カメラはできませので、
CTが最も有効だと思います。
憩室炎の予防としては便秘を避けることが重要です。
肉など動物性たんぱく質・脂質は控えめにし、
野菜や穀物などの食物繊維を日頃から多く摂りましょう。
規則正しい食生活も便通リズムを整えるのに有効です。
また抵抗力が落ちると感染症にかかりやすくなることから、
睡眠をきっちりとって運動を適度に行いましょう。
身体を動かすと腸の動きも活発になります。
またアルコールやカフェイン、香辛料など、
腸に刺激の強いものは摂りすぎないようにしましょう。
以上大腸憩室症についてまとめてみました。
ご参考になれば幸いです。
吉岡医院 吉岡幹博