2020年5月17日
5月も中旬となり
過ごしやすい時期となってきました。
クリニックもコロナ対策で、
窓を開けながらの診療ですが、
通り抜ける風が心地よいです。
皆様は如何お過ごしでしょうか。
京都は緊急事態宣言の解除が見送られましたが、
新規感染者数も減少してますので、
外出自粛ももう少しのご辛抱かもしれません。
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さて今回は、
糖尿病の患者様が使用する
新しいタイプの血糖測定器について
ご紹介いたします。
皆さんは自己血糖測定器を
ご存知ですか?
インスリンの自己注射をされている患者様が、
1日1~2回血糖値を調べておられますが、
それを測定する機械のことです。
今でも広く使われている血糖測定器は、
指先に小さい針を刺して採取した血液を
センサーで読み取り測定するものです。
毎回針で指先を刺す痛みと手間があるのと、
当たり前ですが測定したタイミングのみの
血糖値しかわからない欠点がありました。
今回ご紹介する測定器は、
センサーを腕に取り付けると、
24時間持続で14日間も
連続して血糖測定をするというものです。
つまり毎回痛い思いをすることなく、
読み取り装置(リーダー)をかざすだけで、
いつでも血糖値を知ることができるのです。
画期的と思いませんか?
この装置は決して新しいものではなく、
2017年9月より保険収載され
一般の病院やクリニックでも使用されています。
ではなぜ今ここでご紹介するのか?
それは今回、
とある病院からのご紹介で、
この装置を使用している糖尿病の患者様が
当院に来られることになったからです。
私もこの装置の評判は聞いておりましたが、
実際には使用したことがないので、
メーカーに説明の依頼をしました。
1週間前のことです。
メーカーの担当者の説明を受けながら
まずはセンサーを左腕の裏側に
器具を用いて貼り付けました。
私の腕でお見苦しいですが、
こんな感じてしっかりと粘着剤で張り付きます。
この写真は現在1週間たった状態のものです。
全く剥がれてくる気配はありません。
このセンサーは1回で2週間つけっぱなしです。
お風呂もプールでの水泳にも
剥がれることはないそうです。
ではどうやって血糖値が測れるのでしょうか?
実はセンサーの真ん中に小さい針が飛び出していて
それが皮下に刺さっています。
とても柔らかい針なので、
装着するときに痛みはほとんど感じませんし、
装着中は着けていることを忘れるくらいです。
図で書くとこのようになっています。
「FreeStyleリブレ – アボット糖尿病関連製品サイト」より
円盤の中央から
細い針が出ているのが分かります。
ただその針は血管には入っていません。
皮膚の浅いところにだけ刺さっています。
皆さんここで疑問に思われると思います。
実際の血糖値は血液中の糖分を測定しますが、
血管内に針がなく血液に触れないで、
どうやって血糖値を測定するのでしょう。
これはこういうことです。
この機械では血液中の糖分を測るのではなく、
皮下組織に存在する「間質液」に含まれる
グルコース濃度を測定しているということです。
血液中の糖分は染み出すような形で、
間質液中の糖分に移行していきます。
血糖値と間質液中のグルコース値の間には、
高い相関関係があることが証明されていますので、
この数値を血糖値と考えてよいとのことです。
ただし実際の血糖が間質に染み出すには
多少時間がかかるそうで、
5~10分ぐらい遅れるそうです。
これくらいのタイムラグなら、
運用上はほとんど影響ありませんので大丈夫です。
そして測定する方法ですが、
専用のリーダーをセンサーに近づけます。
こんな機械です。
電車の改札などで使用するfelicaを使った
非接触型の読み取り機です。
センサーにかざすとこのように数値が示されます。
本当に近づけるだけで「ピッ」と反応します。
これが「間質液中のグルコース濃度」≒「血糖値」です。
写真の時は朝食後で血糖値は少し上昇していますが、
知りたいときにいつでもどこでも簡単に数値を見ることができます。
自分で見ていないときにも、
センサーは15分おきに情報を取っていますので、
24時間のグラフを見ることができます。
こんな感じです。
さらにパソコンにソフトを入れ接続すると、
詳細な解析結果を受け取ることもできます。
今まで見えなかったものが手に取るようにわかるのです。
私も実際に使ってみて、
その装着具合や使用方法を体験しましたが、
とても簡単で快適です。
知りたいときに数値を見ることができますので、
食後の血糖がどのようなカーブを描いているのか、
何を食べるとどのくらい上がるのか、
非常に興味深い結果を知ることができます。
最近は昼食をテイクアウトで取ることが多いですが、
定食と丼ものではこんなに血糖の上昇が違うのかと、
とても驚きました。
ピラフを食べた時には、
量も特に多かったと思いますが、
食後40分くらいから急上昇しました。
あまりの上昇に恐怖を感じ、
思わず医院の廊下で10分程軽く運動をしました。
すると血糖の上昇は抑えられました。
ほっとして運動をやめると、
またしばらくして血糖値は再上昇しました。
食後の運動がこれほどまで血糖に影響することを、
理論でなく実際に理解することができました。
食事に無頓着な私も、
さすがにこの1週間で食事の内容を
少し見直すようになりました。
これは糖尿病の患者様には、
とても有効なツールだと思いました。
糖尿病の患者様のみならず、
私のように運動不足で体重が増えてきて、
これから生活習慣病が出始める方など、
これを付けているだけで意識が変わります。
さてこの機械ですが
健康保険で適応があるのは、
1日2回以上インスリン治療を行っている方です。
飲み薬だけの糖尿病の患者様や、
糖尿病境界型(予備軍)の患者様には
残念ながら保険適応がありません。
でも自費で行うことは可能です。
読み取り機は8千円弱で購入できますし、
センサー(1回2週間持続)は、
こちらも7千円くらいで購入できるようです。
また興味のある方は、
一度ご相談ください。
吉岡医院 吉岡幹博