2020年1月17日
1月も早くも中旬を過ぎ、
今年はいまだに雪が舞うこともなく、
暖冬が続いていますね。
寒さが苦手な私にはありがたいですし、
インフルエンザや肺炎の患者様の数も、
例年より穏やかな感じがいたします。
日によっては寒暖差がありますので、
皆様も体調を崩されないよう、
ご注意くださいませ。
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さて、
当院は肛門科を標榜しておりますので、
痔の患者様が多数お見えになります。
排便の際の出血や痛みは、
多くは痔の症状で説明がつきます。
肛門鏡でその場で肛門の観察を行い、
裂肛や内痔核があれば、
それで診断し治療することも多いです。
でも実際のところ、
痔からの出血ではないケースが
時々あります。
この1月からの大腸カメラで、
血便の方で何件か
大きな病気を認めました。
今回はその一部を
ご紹介いたします。
お一人目は直腸がんの方です。
この方の症状は排便時の鮮血で、
私も痔で間違いないかな
と思っていました。
私が勧めるまでもなく
ご本人から大腸カメラを希望されたので、
実施しました。
肛門からカメラを入れると、
入ってすぐの直腸に腫瘍を認めました。
すぐに直腸がんだとわかりました。
発見した段階ですでに、
内視鏡治療の対象にはならず、
進行がんの状態でした。
手術で治る段階と思いますが、
本当に肛門管に近接するがんでしたので、
人工肛門にならないかどうか心配です。
またその別の方では、
S状結腸の進行がんが見つかりました。
直腸がんに比べると
肛門からはだいぶ奥にできていましたが、
やはりその方も肉眼的に血便を認めていました。
そのほかこれは痔の症状とは異なりますが、
腹痛を伴う血便として、
「虚血性腸炎」の方が2名おられました。
「虚血性腸炎」は聞きなれないと思いますが、
腸に行っている血管が痙攣などをおこし、
血流障害を起こす病気です。
心臓で起これば狭心症や心筋梗塞になりますが、
腸の場合は周りからの血液の供給があり、
完全に壊死になることはありません。
症状としては突然の強い腹痛と共に、
血流障害に陥った粘膜から出血するため、
多量の血便をきたします。
ひどい場合には、
排便時に血圧が低下し、
トイレで意識を失う方もおられます。
緊急で大腸カメラを行うと、
脱落した粘膜と赤くはれた粘膜が
腸管の縦方向に広がっているのが観察できます。
軽症であれば自宅で安静にして
消化のいい食事で経過を見ますが、
重症の場合は絶食が必要となり入院になります。
このように毎日大腸カメラを行っていると、
血便はやはり侮れないと
つくづく思います。
痔からの出血であった場合、
命にかかわることは滅多にありませんが、
もしその出血が痔からではなかった場合、
ものすごく大きな病気を抱えているかもしれません。
大腸カメラの重要性を
日々感じています。
皆様も血便があれば放置せず、
一度大腸カメラを受けてみては如何でしょうか。
実際のところ便潜血陽性の方もそうですが、
受けてみて何も見つからない場合も
少なくありません。
「なーんだ、受けなくてもよかったんかな」
と思われる方もおられると思います。
しかしそこは、
「大きな病気がなくてよかったな」と
考えていただけるといいかなと思います。
吉岡医院 吉岡幹博