2019年12月17日
ずいぶんと寒くなってきました。
少し厚手のコートや、
ダウンジャケットが手放せなくなりました。
医院には毎日たくさんの
風邪の患者様が来られています。
インフルエンザの患者様も、
先週から急に増えてきました。
先週は27名が陽性で全てA型でした。
例年より少し早くに増えてきました。
皆様も公共交通機関のご利用や
街中にお出かけの際にはご注意ください。
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さて、
今回はインフルエンザで使用する
お薬について少しお話いたします。
皆さんはインフルエンザのお薬を、
いくつかご存知でしょうか?
昔から使われている、
インフルエンザ治療薬の代名詞的な、
「タミフル」はご存知かと思います。
タミフルは5日間の飲み薬です。
「リレンザ」はどうでしょうか?
名前をお聞きになったことは
ありますでしょうか?
リレンザは5日間の吸入薬です。
ディスクに入った粉末を、
専用の器具で口から吸いこみます。
また「イナビル」というお薬があります。
こちらも吸入薬です。
しかも1回きりで終了です。
さらに「ラピアクタ」というお薬もあります。
このお薬は滅多に登場しません。
唯一点滴で使用するお薬です。
これら4つのお薬は
「ノイラミニダーゼ阻害薬」と呼ばれ、
同じ作用のお薬です。
従って効果のほども大差ありません。
基本的に良く効きます。
このメインの4種類に、
昨年新たに加わった抗インフルエンザ薬として
「ゾフルーザ」があります。
昨シーズンに新薬として、
大々的に報道されたので、
聞き覚えのある方もおられるかもしれません。
ゾフルーザは今までのお薬とは違います。
キャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を阻害し、
ウイルスのmRNAの合成を阻害し、
ウイルスの増殖を抑えるものです。
いきなり言われても、
良くわかりませんね。
私も専門家でないので詳しくないのですが、
既存のノイラミニダーゼ阻害薬は、
いったん宿主の細胞で増殖したウイルスが、
細胞から出ていく際に切りなされていく
はさみのようなところをブロックするそうです。
増殖したウイルスはその感染細胞から離れ、
どんどんと数を増やしていくのですが、
その際には感染細胞からウイルスが
切り離される必要があります。
その切り離すはさみのような部分が、
ノイラミニダーゼという酵素に当たるので、
お薬はそこを阻害し増殖を抑えるそうです。
それに対しゾフルーザは、
細胞内でのウイルスの複製を阻害し、
増殖そのものを抑えるお薬です。
ノイラミニダーゼ阻害薬に比べ
より根本的なところで効果を発揮するので、
素早く効果が出るのが特徴です。
さらに、
ゾフルーザの使用方法は簡単です。
1回内服するのみです。
従ってゾフルーザのイメージは、
たった1回のみの内服で、
早く効いて有効性も高いというものです。
そのため昨年の発売以来、
現場では一気にゾフルーザが
使われました。
もう今までのお薬を
使う理由がないのではないか、
と思われるほどでした。
私もそう思いました。
お薬を選択する必要がなくなれば、
治療はよりシンプルになります。
しかしながら、昨年シーズン中に、
ゾフルーザが「耐性ウイルス」を生じさせる
との報告がありました。
「耐性ウイルス」とは、
お薬が効かないウイルスのことです。
特に小さいお子さんで、
耐性ウイルスの出現頻度が
高かったそうです。
それを踏まえて、
今シーズン初めには各学会から、
以下の様な提言がされました。
・日本感染症学会
「12歳未満の小児では
耐性ウイルスの出現頻度が高いことを考慮し
慎重に投与を検討する」
・日本小児科学会
「12歳未満の小児には
積極的な投与を推奨しない」
慎重に投与を検討すると言われても、
何を検討して決めいればいいのでしょう(笑)
国会の答弁みたいで困ります。
学会からこのような提言があると、
現場では非常に使いづらくなります。
従来のタミフル、リレンザなどが、
何の問題もなく使用できるのですから、
わざわざゾフルーザを使う必要はありません。
年齢に限定しているとはいえ、
「推奨しない」や「慎重な投与」といわれると、
もはや「使わないでね」と同義に聞こえます。
ではゾフルーザはこれから、
出番がなくなるのでしょうか?
今のところ、
ゾフルーザは耐性ウイルスの問題で
注意喚起がされています。
実はタミフルでも過去には
耐性ウイルスの問題が生じていましたが、
次のシーズンには通常の状態に戻ったそうです。
つまり耐性ウイルスは、
ウイルスが増殖する中で生じた、
RNAのコピーミスのようなウイルスです。
従ってどれだけの病原性や感染能力があるのか、
余りわかっていないのです。
発生するウイルス数が少ないとそのうち淘汰され、
蔓延することが無いのではないか…、
その様な可能性もありますね。
一方ゾフルーザは既存の薬剤に比べ、
ウイルス量を極めて速く減少させることが、
開発段階の研究で示されています。
データでは確か、
投与翌日のウイルス量は既存の薬剤の、
100分の1まで減少効果があるとされていました。
そうなると、
感染力は早期に低下するのではと
考えれれます。
それならゾフルーザを使用したほうが、
自分も早く良くなるし、
他の人にも移しにくくなることも考えられます。
既存の薬剤では最低5日間の
登校ができない期間があります。
これが例えば、
ゾフルーザなら早くウイルス量が減るので、
3日間自宅療養で登校許可とかになれば、
これはかなりの社会に寄与すると思われます。
今のところゾフルーザの方が既存の薬剤より、
他人への感染力が早く低下するという
データは無いようですが、
何となくそのような期待もしてしまいます。
今は耐性ウイルスの問題がありますが、
それがあまり影響がなく、
それ以上の恩恵があれば、
また第一選択薬になるかもしれませんね。
あくまで専門家ではない、
私の勝手な想像でしかありませんが…。
インフルエンザ流行が始まりました。
今シーズンもどのお薬を使うか、
何となく迷いながら過ごしそうです。
吉岡医院 吉岡幹博