2018年12月17日
早いもので今年もあと
2週間となりました。
皆様は年末年始の準備は如何でしょうか?
当院も現在、
患者様にお出しする年賀状の作成に、
追われております。
毎年この作業が終わると、
何となく今年も終わりだなと
実感するところです。
インフルエンザの患者様が、
先週あたりから増え始めてきました。
皆様もご注意ください。
●
さて今回は、
新たな便秘薬である
ポリエチレングリコール製剤のご紹介です。
商品名を
「モビコール配合内用剤」
といいます。
ポリエチレングリコール製剤、
略してPEG(ペグ)製剤と呼んでいますが、
皆様はあまり聞きなじみはないでしょうか。
これならご存知の方も
あるかもしれません。
大腸カメラの準備の際に、
約2Lの下剤を飲んで
腸を空っぽにするのですが、
その液体の下剤が、
ポリエチレングリコールです。
商品名を「ニフレック」といいます。
思い出した方もおられるかもしれません。
正直飲みやすい液体ではないのですが、
下剤としては効果が高く副作用が少ないので、
海外では評価が非常に高いお薬です。
日本では大腸検査前の腸管洗浄の際の
下剤として使用されていますが、
日常の便秘症に対しての適応を取ったのは、
今回が初めてとなります。
この製剤は粉薬で
決まった量の水に溶かして服用します。
作用機序ですが、
PEGは腸管ではほとんど吸収されず、
そのまま溶かした水と共に大腸に流れます。
(水分保持効果)
大腸に到達し便中の水分量が増加し、
便が軟化、便の容積が増えます。
(便の軟化・増大)
便の容積が増えることで、
大腸の蠕動運動が活発化し、
便の腸管内の輸送、排便を促進します。
(大腸蠕動の活発化)
腸管内の水分増加に伴い、
スムーズな排便が可能となります。
(滑らかな排便)
従って下剤の種類としては、
「浸透圧性下剤」に分類されます。
浸透圧性下剤の代表格である、
酸化マグネシウムには、
高マグネシウム血症の副作用がありますが、
PEG製剤はほとんど腸管から吸収されないため、
そのような副作用もありません。
従って安全性の高い下剤といえます。
さて、ここからが
このお薬の最大の特徴です。
このお薬は今までの下剤と異なり、
錠剤やカプセルではありません。
散剤といって粉のお薬です。
一袋を水やお茶、ジュースなどの液体
約60mlに溶かして飲むというお薬です。
あまりない剤型ですよね。
私もサンプルを入手いたしましたので、
家で試してみました。
まず1包はの大きさは、
携帯電話くらいの大きさです。
水60ml(コップ1/3くらい)を
コップに用意します。
白色の粉薬が入っていて、
それを水(液体)に溶かします。
かき混ぜますが、
あまりすんなりとは溶けません。
そう言えば腸管洗浄剤の
「ニフレック」を溶かす時、
看護師さんは容器を激しく振って溶かしています。
かなり強くかき混ぜないと
きれいには溶けないようです。
少しもろもろが残りました。
この無色透明の液体を飲みます。
味はややとろみのある塩味です。
正直おいしくはありません。
フレーバーはありませんが、
やはりあの「ニフレック」と同じ、
飲みにくい味がします。
でも2L飲むわけではないので
一気に飲むと
それほど気になる味ではありません。
一般的な用法容量は、
大人と12歳以上の子供には、
初回は1回2包を1日1回経口投与します。
以降は症状に合わせ、
1日1~3回経口投与し、
最大1日6包まで投与可能です。
この薬は小児でも使用でき、
1日1回1包を投与し、
最大容量は1日4包までです。
気になる薬価ですが、
1包が83.9円です。
標準的な投与量は1日2包ですので、
1日167.8円の1~3割負担になります。
これは既存の酸化マグネシウムの
標準投与量での薬価と比較すると、
約10倍となります。
やはり新薬は高額ですね。
ただ、酸化マグネシウムは
作ると赤字になるくらい安いお薬ですので、
それと新薬を比較するのは酷かもしれません。
あとは持ち運びの問題と、
内服に手間がかかる問題です。
毎日内服する便秘薬ですので、
定期的に病院からもらって帰ったり、
出張などで持ち運んだりが必要です。
1包がある程度の大きさがありますので、
錠剤であれば1枚のシートで10錠入っているところを、
10包はそれなりの大きさになります。
それが1月分となると、
シートで6シート持つのと60包持つのでは、
かさばり方が違いますね。
それと服用するには、
コップと攪拌棒のようなものが
必要となります。
いつでも気軽に飲めないかもしれません。
水に溶かして飲むお薬は、
一般的には多くありませんので、
馴染むまでが大変かもしれません。
ただ世界的には酸化マグネシウムなんかより、
はるかに使用量が多い便秘薬になります。
安全性が高く使用感が良ければ、
だんだん認知されると思います。
しばらくはどのような方に効果的なのか、
投与量と投与の回数を変えながら、
有効性を確認できればと考えています。
酸化マグネシウムでは効果不十分の方、
刺激性下剤からの変更や減量をお考えの方は、
一度試してみられては如何でしょうか。
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