2018年7月7日
連日の大雨ですね。
私の家のすぐそばを流れる鴨川が、
濁流と化しています。
京都をはじめ西日本を中心に、
各地で豪雨の報告が相次いでいます。
普段穏やかな鴨川が氾濫の危険性があり、
私の家も避難準備区域に指定されていましたが、
このようなことは生まれてから初めてです。
また嵐山渡月橋を流れる桂川は、
いつも豪雨の際には氾濫の危険にさらされています。
今回も一部道路は浸水しているようです。
大きな被害が出ないことを祈っておりますが、
これには影で支えている人がいること、
皆様はご存知ですか。
●
ちょうど先週の週末私たち一家は、
京都府南丹市にある日吉町に、
キャンプに来ていました。
京都市内から縦貫道に乗って約1時間、
「ひよしフォレストリゾート山の家」が、
キャンプ場所です。
ここにはこのようなコテージがあり、
家族や仲間でBBQをして
宿泊することができます。
コテージの中の様子です。
ログハウス調で2階に寝室があります。
私たちの宿泊したコテージは、
家族で過ごせるくらいの大きさですが、
ほかのコテージではグループで遊びに来て
宿泊できるところもあります。
下のマップのように、
こじんまりとしたアットホームな
キャンプ場です。
夜には施設のバスで、
蛍を見に行くツアーもあり、
私たちも鑑賞を楽しみました。
コテージの前には清流があり、
翌朝は川遊びをしました。
そして午後からは、近くにある「日吉ダム」と、
温泉やプールのあるレジャー施設
「スプリングス日吉」を訪れました。
ところで皆さんは、
「日吉ダム」をご存知でしょうか?
日吉ダムは京都府南丹市日吉町にあり、
淀川の主要支川の一つである
桂川中流部に位置するダムです。
京都市からの位置関係です。
嵐山の上流に日吉ダムがあります。
平成10年に桂川下流の治水のために、
昭和46年ごろからの長年の構想の末、
多目的ダムが建設されました。
今で運用開始から20年、
比較的新しいダムではあります。
ダムの周辺マップです。
実はわたし京都出身ですが、
京都にこんな立派なダムがあることは、
知りませんでした。
私にとって初めてのダム見学は、
とてもわくわくするものでした。
そこにはダムの構想から建設時の状況、
運用開始からその後の災害等につき、
ダムの果たす役割とともに展示されています。
このダム建設のため日吉町の154世帯が、
ダム建設でできる湖の湖底に
沈んでしまったそうです。
当時は反対運動も強かったようです。
現在日吉町はダムによる地域振興が成功し、
ダム直下の複合温泉施設「スプリングスひよし」とともに
京都府民の一大レジャースポットとして成長しました。
また丹波地域の観光地として定着しており、
ダムとともに高い経済効果を生み出しているそうです。
日吉ダムが日ごろの役割を果たした中で、
最もその能力を発揮した時の一つに
平成25年の台風18号の洪水があります。
日吉ダムがギリギリのところで、
下流の水没を最小限で食い止めたそうです。
その時の様子です。
ご記憶の方も多いと思います。
桂川が氾濫し渡月橋が水没しています。
(平成25年9月台風18号洪水の概要 – 国土交通省近畿地方整備局より)
一方ダム水位が上昇し、
今にもあふれ出しそうになっています。
この時のダム貯留水の水位201mが、
これまでのダム最高水位として記録されています。
この時には大雨で大量の水がダムに流入し、
下流への放出量をギリギリまで調整し、
ダム決壊の危険と戦った様子も展示されています。
つまりダムを守るために放水量を上げると、
その下流に大量の水が流入し、
被害を拡大させてしまう可能性があるのです。
ダムの水位が限界まで達したときには
最上部の「非常用洪水吐きゲート」を解放するのですが、
その時は何とか開くことなく乗りきったそうです。
結局運用開始から今まで、
「非常用洪水吐きゲート」は
一度も解放されていないそうです。
ちなみにこれを開くと、
下流には毎秒数百トン~数千トンという
大量の水が流れるそうです。
従ってダムにとっては、
貯水量の限界に達した時の
最終手段ということになるのでしょう。
私達はダムの下流側の広場から、
その巨大な建造物を眺め、
その迫力と自然の大きなエネルギーを
感じていました。
午後からは
「スプリングス日吉」にある温水プールで、
子供たちは存分に楽しみました。
最後は施設内にある温泉に浸かり、
大変楽しい休日を過ごしたのでした。
この日のダムは晴天で眺めも良く、
水位もどちらかといえば少な目で、
大変穏やかな日でした。
そしてこの時には、
その3日後から降りだした雨で、
ダム史上最大の危機を迎えるとは
夢にも思いませんでした。
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今週水曜日から降り始めた雨は、
京都から始まり西日本に、
集中的な大雨をもたらしました。
短時間局地的な豪雨
というわけではありませんが、
比較的強い雨が実に長い時間降り続きました。
木曜日には鴨川が増水し洪水警報も発令され、
その日の午後からは携帯電話にはひっきりなしに
避難情報のアラームが鳴りました。
賀茂川と高野川の合流する地帯です。
いつもは川の中に置かれた飛び石で、
簡単に対岸まで渡れるところです。
中州にまで水が迫ってきています。
京都府を中心に警報が次々に発表され、
夕方から深夜にかけて、
雨脚は一層強くなりました。
前回大きない被害を受けた福知山市、
日吉ダムのある南丹市も豪雨に見舞われ、
ニュースでも繰り返し避難の呼びかけを
行うようになってきました。
この時の日吉ダムの様相です。
7月5日夕方から強まった雨により、
ダムの流入量は全放出量を大きく上回り、
水位は24時間で20㎝以上も上昇しました。
7月6日6時の時点で貯水位は200.67m、
洪水時最高水位の201mに限りなく近づき、
ダムの貯水の限界を迎えようとしていました。
昨日7月6日も雨は降り続き、
昼頃には嵐山渡月橋付近で
桂川は氾濫しました。
その夕方国土交通省近畿地方整備局は、
緊急会見を開き、日吉ダムの貯水量が満杯となり、
放流量が毎秒約1千トンとなっていると
明らかにしました。
いよいよ非常事態です。
これはかつて一度も解放したことのない、
例の「非常用洪水吐きゲート」を
初めて開いたこととなります。
その時のニュース画像です。
これまでは試験でしか見たことのない、
非常ゲートからの放水の模様です。
すごい勢いです。
今回の豪雨が過去20年間で最大級であったことを
物語っている写真です。
これにより下流の桂川流域では、
ますます水害の危険性が高まりました。
幸い本日(7月7日)になり桂川の水位は低下し、
大きな被害は免れたようです。
日吉ダムの放流量も毎秒300トンに、
下げたとのことでした。
7月7日夜の時点では、
京都に関しては大雨のピークが過ぎ、
周辺の水害は最小限で済んだようです。
私にはもちろんわかりませんが、
日吉ダムをはじめ河川の管理をされている方の
尽力があったに違いないと思います。
ただ放水するだけではなく、
放水の量もギリギリまで制限して、
下流域の様子をうかがいながら調整された結果、
今回も大きな被害を回避できたのではと思います。
今回の災害がこれで終わるのか、
今の時点ではまだわかりませんが、
京都地方ではこれから雨のピークは去り、
一番の危機は脱したのではないかと思います。
私も直前に訪れて初めてその存在を知った日吉ダムが、
一躍脚光を浴びることになった今回の災害、
自宅の近くを流れる鴨川が氾濫の危機に陥ったことや、
初めて避難対象の地域に指定されることなど、
驚きの連続でした。
これからも日吉ダムが、
私たちに見えない恩恵を与えてくれていること、
より身近に感じていければいいと思います。
そして先日の高槻での大地震といい、
今回の突然の豪雨といい、
災害は決して他人ごとではありません。
普段から物理的にも精神的にも準備が必要と、
改めて感じました。