京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院 京都市上京区
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「箔屋野口」さんを訪ねて

2017年5月17日

初夏の清々しい天気が続いています。
自転車通勤の私にとっては、
まだ暑くもなくベストシーズンです。

皆様はいかがお過ごしでしょうか?
この季節散歩やランニングなど、
少し体を動かされてもいいと思います。

花粉症もようやく一段落ですが、
黄砂などで大気が汚れているのでしょうか、
咳の患者さんがまだ多くいらっしゃいます。

 

花粉症やアレルギー体質の方は、
少し長引いたり咳喘息になる方もおられます。
症状の強い方は一度ご相談ください。

 

 

昨年2月のことだったと思います。

私と同世代の男性が、
胃カメラを希望され当院を受診されました。
以前受けた胃カメラが苦しかったとのことです。

そこで最も楽だと思える方法で検査しました。
経鼻内視鏡を口から挿入し、
静脈麻酔で眠ってもらいました。

 

胃カメラは無事終了し、
検査は苦しくなかったと喜んでおられました。
そしてご自身の名刺を置いて行かれました。

そこには「箔画作家 野口琢郎」とあり、
とても美しい作品が載せられていました。

 

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「良かったら一度いらしてください」
そう言って帰って行かれました。

見たこともないきれいな作品で、
ずっと気になっていました。
「箔画」とはどんなものでしょうか。

そんな今年4月のある日、
野口さんがまた胃カメラを受けに来られ、
これを機にお伺いすることになりました。

 

5月10日水曜日の午後より、
作品にとても興味をもった妻とともに、
工房へお伺いしました。

場所は当院のすぐそば、
元誓願寺通の智恵光院と大宮の間、
西陣織関係のお店が並ぶ一角にあります。

格子とのれんがきれいな京町屋です。
小さく「GOLD LEAF ART」と書かれた
看板が添えられています。

 

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野口さんのお母様にお出迎えされ、
奥の庭の見える和室に案内されました。

庭には灯篭や飛び石があり、
色鮮やかな苔や植え込みが
大変きれいに手入れがされていました。

昔ながらの京都らしいお部屋で、
ふと自分が小さい時に住んでいた、
医院になる前の家を思い出しました。

 

もともとは西陣織の帯に編み込むための、
金箔をはった和紙を細かく裁断した「引箔」を
卸しておられたそうです。

しかし西陣織の需要が低下するにつれ、
高価な金箔を用いた素材は
少しずつ使われることがなくなってきたそうです。

時代の移り変わりなのですね。

野口さん自身は、
最初は家業を継ぐつもりだったそうですが、
職人にしかできない金箔を用いた芸術作品を
手掛けるようになったそうです。

そしてその作品を
「箔画」と名付けられました。
箔画は野口さんのオリジナルだったのです。

その後お父様の康さんも、
引箔の仕事に区切りをつけ、
同じように箔画を手掛けるようなったそうです。

現在ではお二人の作品を見に、
連日海外からも多くの芸術家や著名人が訪れ、
京都の観光や芸術文化の一つの要所となっています。

 

お茶と和菓子をいただいているところに、
お父様の康さんが来られ、
金箔の講義をしていただくことになりました。

 

京町屋独特の急な階段を上がり2階に上がると、
そこには金箔関係のさまざまな素材が、
所狭しと置かれていました。

どのような話が行われるのか前置きもないまま、
漆の入っていた丸い箱を椅子代わりに座らせてもらい、
康さんの講義は始まりました。

実際の和紙や金箔を巧みに操りながら
話しがどんどん進んでいきます。
まるで一つの物語が始まったかのようです。

紙に漆を塗りそこに金箔を重ねるとどうなるか、
重ね具合や光の当たり方でどのような変化を起こすか、
・・・質問するタイミングもありません。

「とにかく聞いてください、
そうするとある瞬間に、
全てを理解されます。」

話しの行きつく先もわからないまま、
金箔を乗せる方法、それを細かく裁断し、
西陣織に織り込む工程を教えていただきました。

 

一つ分かったことがあります。

私は「箔屋野口」さんで、
工房を訪ねて作品の説明を受け、
ざっくばらんに話をして帰るつもりでした。

しかしこれは一つの、
きちんと企画され完成された
ツアーであったのです。

お父様の康さんは、
いつも訪ねてこられた方にこのような
講義をされているのだそうです。

逆に言うと、ちょっと来て作品を眺め、
これはどうなっているのですかというようなやり取りでは、
作品や金箔の真意は伝わらないのだと思います。

なので時間、労力をかけてでも、
作品の背景、金箔の歴史などを理解するためには、
このような講義が不可欠なのだと思いました。

 

海外の方にはすべて英語で、
プレゼンテーションされるそうです。
自分の言葉で伝えるという熱意を感じます。

 

物語はどんどん続きます。

・・・

そしてある瞬間、
それまでの説明がこういう意味だったのか、
とわかりました。

今まで知らなかった世界が、
目の前に広がったような気がしました。

繊細な技術で金箔に様々な表情を与え、
化学変化により独特の色彩を引出し、
それが西陣織の帯に更なる深みを与えていたのです。

その後も過去の重要な絵画の金屏風に見られる
金箔の載せ方などの科学的、技術的な考察など、
研究者としても素晴らしい業績を残されていて、
興味深い話をいくつもしていただきました。

 

約1時間くらいお話を聴いたでしょうか?
知られざる西陣織と金箔の話に、
時間を忘れ完全に引き込まれていました。

 

講義の後またご家族としばし話しました。

すると思いがけないことを聞きました。

私の姉と野口琢郎さんのお兄さんが、
学区の小学校で同級生だったそうです。
そして康さんはPTAの会長をされていたそうです。

後日母に話すと覚えておりました。
お兄さんの野口さんのことも、
PTAをされていたお父様のことも。

結局私たちは昔からご近所さんで、
知らない間に、
長い付き合いがあったようです。

 

肝心の野口琢郎さんの作品はというと、
今は売れてしまって在庫は数点のみでした。
もう少し作品を見たかったと残念に思いました。

でも心配いりません。

 

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ロームシアターに野口さんの巨大な作品が
エントランスにかけられているので、
いつでも見に行くことができます。

私も次はその作品に会いに行く予定です。

 

 

野口琢郎氏ホームページ
http://noguchi-takuro.com/