京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院 京都市上京区
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最近流行の麻疹(はしか)について

2016年9月17日

9月も中ごろとなり、
少しづつ秋の気配が漂ってきました。

朝晩は少し涼しくなってきたせいか、
風邪の患者さんもちらほら来られるようになりました。
皆さんもお気を付け下さいね。

さて、
この夏突如発生した麻疹の流行、
ニュースなどでご覧になった方も
おられるかと思います。

事の始まりは8月24日、
医師関係のとあるメーリングリストに、
一通のメールが投稿されました。

そのメールはこんな感じでした。

 

*****

とんでもない事態が起きました。

インドネシア旅行で麻疹に罹って帰国した
関西在住の若者が発症しているにもかかわらず
8月14日に幕張メッセで開催された、

ジャスティンビーバーのコンサートに来場。
(参加者は2万5000人と推定されます)

超人気イベントだったため、
参加者は全国から来ており、
数万人が接触者となりそれぞれの地元に帰りました。

潜伏期は10~12日なので、そろそろ発熱する時期です。

受診はおそらく内科になると思いますので、
地元の医師会・医会などに情報を拡散して、
患者の早期発見に勤められるようお願いする次第です。

*****

 

千葉県の医療機関からの報告でした。
2日前より情報提供があったそうですが、
プレスリリースの関係で24日の報告になったそうです。

コンサートに訪れたのは19歳の男性で、
その5日後の8月19日、兵庫県西宮市内の医療機関で
麻疹と診断されたそうです。

 

厚労省は同月24日、患者が受診する
可能性のある医療機関に注意を呼びかけるよう、
全国の自治体に要請しました。

 

なぜ1人の麻疹患者がコンサートに行っただけで、
これほどの騒ぎになるのでしょうか?

それは麻疹の感染力にあります。

麻疹の感染は、
くしゃみなどでとんだウイルスを
吸って感染する「飛沫感染」、

ウイルスが付着した患者の体や物
(例えばドアノブなど)に、
触れることで感染する「接触感染」のほか、

空気中に漂うウイルスの飛沫核を吸い込む、
「空気感染」でも感染するとされています。
これが最も感染を広げやすい要因となっています。

麻疹の感染力の強さは相当なものがあります。

インフルエンザの感染力を数値で表すと、
2~3になるのですが、麻疹は16~21で、
感染力は何と10倍にもなります。

因みに風疹で7~9、
おたふくかぜでは11~14だそうで、
麻疹の感染力の強さがわかります。

従ってこれだけ多くの人々が集まるところに、
麻疹の患者が入り込むということは、
感染の大きな拡大につながるということです。

更に全国から集まっている集団で感染すると、
感染したことに気づかず、
日本全体に流行が拡がる可能性があります。

これだけでも大変怖いことですね。

さらに、
麻疹は免疫のない人が感染すると、
ほぼ100%発症するそうです。

麻疹に感染すると、
10~12日間の潜伏期間を経て、
発熱、咳などの風邪のような症状が出ます。

その後39度を超える高熱と、
発疹が見られるようになり、
首や顔から全身に広がっていきます。

気をつけなければならないのは、
約3割に合併症を起こすことがあります。
その中には肺炎や脳炎など重篤なものも含まれます。

麻疹にかかってもウイルスに対して有効な治療は無く、
対症療法のみとなります。
かかってからでは遅いということになります。

では予防するしかありません。
予防として効果があるのはワクチンの接種です。

しかし現在26歳から39歳の人は、
ワクチンを接種する機会が1回だけで、
抗体が十分ではないと考えられています。

ということで今回のコンサートの件が、
いかに『とんでもない事態』であったか、
分かっていただけたと思います。

9月初旬の関空での集団感染も、
30代から40代の世代が多かったようです。

更にそれよりも上の年代の人たちは、
ワクチン接種する機会がなく、
多くの人は麻疹に感染し抗体があるとされています。

でも実際は記憶があいまいであったり、
他の感染症と勘違いしていたりで、
中には抗体のない方もおられると思います。

 

このような方にはワクチン接種が必要なのですが、
関空での集団感染の報道以来、
あっという間にワクチンが品薄になりました。

当院もたくさんお問い合わせをいただいておりますが、
今のところ定期接種予定のわずかの方を除いて、
お断りせざるを得ない心苦しい状況が続いています。

医師会からも通達が来ました。
ワクチン接種に優先順位を定めています。

1、定期接種対象者(1期、2期)
2、麻疹患者の接触者で、ワクチン未接種者
3、中国、モンゴル、東南アジア等
麻疹流行国への渡航者でかつワクチン未接種者

ということですが、
優先順位をつけられても、
ワクチンが入手できないのが現状です。

昨日製薬メーカー卸各社に問い合わせてみましたが、
麻疹ワクチン、MRワクチンとも欠品していて、
出荷のめどは立っていないとのことです。

では、何ができるでしょうか?

先ずは自分自身が、
麻疹にかかる可能性が高いかどうか、
調べてみてはいかがでしょうか?

ワクチン接種歴が不確かな方、
麻疹にかかったことがあるかわからない方は、
まず母子手帳を確認して下さい。

2度のワクチン接種がなされていたり、
麻疹罹患の既往があれば、
抗体があると考えられます。

それも不明な方は、
麻疹の抗体検査を受けられることを
お勧めいたします。

保険はきかず自費診療となりますが、
まずは自分自身の感染のリスクについて、
知ることが大切と思われます。

心配な方はご検討ください。

ワクチンの供給に関しては、
なにか動きがあれば当ホームページで、
適宜ご報告いたします。

しかし優先順位からすると、
一般の方が接種できるまでには、
少し時間がかかりそうです。