2016年2月17日
まだまだ寒い日が続いておりますが、
皆様体調は如何でしょうか?
医院の方は風邪の患者様が多くなり、
その中で高熱の方にでは、
インフルエンザの割合が増えています。
ただ微熱でもインフルエンザのことがあり、
注意が必要です。
たとえ37度台でも家や学校で、
インフルエンザの方と接触のあった患者様には、
積極的に検査をしています。
昨日は、「熱はないけど寒気がする」という方がおられ、
念のために調べましょうかと言って調べると、
何とインフルエンザでした。平熱ですよ。
こうなると何を基準にするか難しくなります。
以前のように、「高熱が出たら調べましょう」
では見落としてしまう可能性があります。
熱があまりなくても、
寒気がする、しんどい、頭痛、関節痛のある方は、
念のために調べてもらっても良いかと思われます。
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今回はピロリ菌による胃炎のお話です。
胃カメラの説明の際に、
「ピロリ菌がいそうな状態でしたら、その場で検査します」
とご説明しております。
そうすると、
「内視鏡でピロリ菌が見えるのですか」
と聞かれることがあります。
言葉足らずで申し訳ありません。
ピロリ菌は顕微鏡でようやく見える大きさですので、
通常の内視鏡では直接見つけることはできません。
では何をもとにピロリ菌が、
いるかどうか判断しているのかと申しますと、
「萎縮性胃炎」があるかどうかということです。
ピロリ菌は一般的におよそ5歳までの幼少期に、
感染が成立するといわれており、
治療をしなければそのまま感染が続きます。
逆に幼少期にかからなければ、
その後はあまり感染が成立する機会が、
少ないといわれております。
ピロリ菌は主に、胃の前庭部といって、
胃の出口に近いところの粘膜で感染し住みつき、
その粘膜に毒素を注入し胃炎を起こさせます。
胃炎が起きた場所の胃の粘膜は、
分泌腺のなどの構造物がダメージを受け、
粘膜の丈が低くやせ細った状態になります。
内視鏡では、粘膜表面が薄くなり、
まるで絨毯が剥げたようなまだらに白い、
ざらざらとした胃粘膜が観察されます。
これが「萎縮性胃炎」と呼ばれる胃炎です。
前庭部を中心として起こる萎縮性胃炎は、
ピロリ菌感染に特徴的な所見です。
ピロリ菌感染が長期に及んだり菌量が増えたりすると、
萎縮は胃の前庭部から入口(噴門)の方向に向かって、
徐々に広がってゆきます。
したがって一概には言えませんが、
若い人よりも高齢者の方が感染時間が長いので、
萎縮は広範にみられる傾向にあります。
内視鏡検査で萎縮性胃炎を認めれば、
粘膜を数か所採取し、
ピロリ菌感染の有無を調べます。
逆に萎縮のないきれいな胃粘膜を見た場合には、
ピロリ菌がいないと判断できることが多く、
ピロリ菌の検査は省略することができます。
私のイメージでは、
粘膜を観察しただけで9割くらいの方は、
ピロリ菌がいるかどうかわかると思います。
菌量が少なく萎縮が軽度であったり、
他の胃炎を合併している場合などは、
見た目だけでは判定が困難なことがあります。
当院では内視鏡時のピロリ菌検査は、
2種類で判定しております。
一つは「迅速ウレアーゼ検査」と言って、
ピロリ菌の出すウレアーゼで尿素を分解させ、
アンモニアを試験紙で検出する方法です。
「迅速」というだけあって、
1時間で判定できるものです。
もう一つは「鏡検法」と言って、
採取した粘膜を顕微鏡で観察し、
ピロリ菌の形をした菌を検出する方法です。
これは顕微鏡で病理の医師が観察するので、
プレパラートの作成などに日数がかかり、
1週間から10日後に結果が返ってきます。
どちらの検査も精度が100%ではないので、
二つの検査の結果で判定した方が、
間違いが少ないと思っています。
という具合で、胃カメラの際には、
萎縮性胃炎をもとにピロリ菌がいるかどうかを、
判断し検査しております。
ピロリ菌が胃がんの大きな原因と判明した今日、
ピロリ菌の有無は胃がんのリスクを判定するうえで、
最も重要な要件となります。
いままで胃カメラを受けたことのない方は、
症状があまりなくても、一度胃カメラを受けていただき、
萎縮性胃炎があるかどうかチェックされてはどうでしょうか?