京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

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「腸内フローラ」はまるで”指紋”

2015年5月18日

今年2月ごろだと思いますが、NHKで
「腸内フローラ 解明!驚異の細菌パワー」
という番組がありました。

 

最近にわかに注目を集めている
腸内細菌、腸内フローラですが、
皆さんはこの言葉耳にされたことはありますか?

 

先日、腸内細菌に関する講演会があり、
拝聴してまいりました。
大変興味深い内容でしたので、一部ご紹介します。

 

●腸内フローラとは?

 

昆虫も含め多くの生き物には、
細菌が棲みついており、
細菌の力を借りて生きています。

 

腸内細菌のおかげで、食べ物を分解できたり、
栄養として吸収できたりと、
人間も腸内細菌と共生しています。

 

“腸内フローラ”とは、
腸の中に住む細菌たちの生態系のことを言います。
フローラはお花畑という意味です。

 

 

人間の腸の中には2000種類、100兆個を越える細菌が、
まるでお花畑のように安定した状態で住みついていて、
私たちの健康に大きく関与しています。

 

人間1人の細胞が60兆個といわれていますので、
いかに腸内細菌が膨大な数かわかると思います。
糞便の約半分は腸内細菌とその死骸だそうです。

 

ただし確認できている腸内細菌は、
全体の30%程度、
半分以上は培養できないそうです。

 

それは生体外で、
腸内環境を再現できないためで、
培養しても育たない菌が多くあるとのことです。

 

まだまだ未知の世界であるようです。
それでも最近の研究で、
わかってきたことがいくつかあります。

 

●個人特有のパターンをとる

 

生まれる前の赤ちゃんには、
腸内細菌は存在しません。

 

まず出産に際して、
母親の産道を通過する際に、
初めて細菌と接触します。

 

その後離乳期まで、
母親からの伝播や食事、衛生環境などに
影響を受けながら少しずつ定着します。

 

小児期から成人になるにつれ、
徐々にその個人の腸内細菌として
安定化してゆきます。

 

その際、どのような種類の細菌が、
どれくらいの割合で棲みつくかは、
個人個人によって異なるそうです。

 

最も影響を受けるのは、
母親の腸内細菌だそうです。

 

それでも個人特有のパターンをとり、
健康なら生涯にわたり、
その種類や割合は大きく変化しないそうです。

 

このような理由で、
腸内フローラは指紋のようなものだと
言われるようになりました。

 

●おならは遺伝する?

 

おならの成分であるメタンの含有量は、
メタン産生菌がいるかどうかによるそうです。

 

母親がメタン産生菌を持っていなければ、
その子供も高率にメタン産生菌を持っていないそうです。
いいかえるとおならも遺伝する可能性があります。

 

●通過菌は定着できない

 

例えば、
乳酸菌の一種である
ヤクルト(ラクトバチラス・カゼイ・シロタ株)は、
糖から乳酸を作り、腐敗菌の増殖を防ぎます。

 

しかし通常は通過菌は腸内細菌として定着しません。
そこでヤクルトの効果を持続させるには、
毎日飲む必要があるのです。

 

●4つの大きな門

 

人間の腸には、
自然界に存在するおおよそ50の門(細菌のグループ)から、
4つの門が大半を占めています。
進化の過程でこの4つを選択したと考えられています。

 

ⅰ)ファーミキューテス門
ⅱ)バクテロイデス門
ⅲ)プロテオバクテリア門
ⅳ)アクチノバクテリア門

 

研究ではバクテロイデスが増えると、
体の体型は痩せ型になるそうです。

 

またBMIが30を超える肥満の方と、
BMIが20を切る痩せ型の方とでは、
腸内細菌にしめるバクテロイデスの割合が、
異なるとの報告もあります。

 

潰瘍性大腸炎やクローン病といった
炎症性腸疾患を持つ患者さんの腸内細菌は、
健常者のものとは異なるとも言われいています。

 

 

また体型が痩せ型の人の腸内細菌を移入すると、
メタボリックシンドロームの、
インスリン感受性を改善するそうです。

 

つまり腸内細菌のパターンで、太り易かったり、
病気になり易かったりするということが、
わかって来たのです。

 

●究極の治療、糞便移植

 

健康な腸内細菌をそのまま、
病気の方に移植するという治療です。

 

方法は「ドナー便」150グラムを水で希釈し、
大腸カメラを用いて、
盲腸に散布するのだそうです。

 

潰瘍性大腸炎やクローン病といった、
炎症性腸疾患の治療に期待されていますが、
今の所クローン病で多少効果あり、
潰瘍性大腸炎ではまだ不十分だそうです。

 

ただし、抗生剤の使い過ぎで腸内細菌が破壊され、
クロストリジウムが大量に発生する、
「偽膜性腸炎」にはかなり有効というのがわかってきました。

 

これからの研究が待たれるところです。

 

*******

 

私も耳学問ですので、
十分理解できておりませんが、
トピックスですのでつい「便乗」しました。

 

クローン病などは衛生状態良くなかった時代には、
とても少なかった病気ですので、
糞便移植などは有効ではないかと思っています。

 

しかし、やはり、
他人の便を注入するのは、
何となく抵抗がありますね。

 

アメリカのベンチャーなどは、
エッセンスだけをカプセルに詰め込んで、
製品化しているところもあるそうです。

 

10年先には当たり前の治療でしょうか?
これからますます注目ですね。