2014年6月7日
6月に入り梅雨空が続いております。
蒸し暑くなってついクーラーをつけてしまいます。
皆さんも体調管理にお気を付け下さい。
さて当院は大きく分けて、
小児科と内科に分かれておりますが、
私が担当する内科は主に消化器内科が専門です。
そのため、老若男女に関わらず、
腹部の症状を訴える方がたくさん来られます。
その中で最も多いのが胃の痛みです。
私は胃カメラをご希望される場合や、
こちらからお勧めする場合でもそうですが、
同時に腹部エコーを受けることをお勧めしています。
その理由は、
胃カメラでわかるのは食道、胃、十二指腸ですが、
エコーではその周辺の臓器の情報が得られるからです。
エコーでチェックできる主な臓器は、
肝臓、胆のう、膵臓、腎臓、膀胱などです。
胃の痛みで来られる場合は、
多くは食道や胃、十二指腸に原因がありますが、
時には胃以外のこともあります。
可能性のあるものとして、
胆石症
胆のう炎
胆管炎
膵炎
虫垂炎
などでしょうか。
虫垂炎は右下腹部の痛みがメインですが、
初期にはみぞおち不快感や吐き気など、
胃の症状が出ることもあります。
このような病気は、
もちろん胃カメラでは診断がつきません。
エコーを行って初めてわかります。
反対に、
腹部エコーでは胃の中の様子はわかりません。
空気のある臓器はエコーでは詳細に見れないからです。
つまり胃カメラと腹部エコーは、
お互いを補っている状況にあります。
本田と香川の様なものです。
(長友と香川?)
また胃カメラも腹部エコーも、
検査の準備として絶食が必要なのですが、
同じ準備で両方検査できる手軽さがあります。
ということで、当院では胃カメラを受ける際に、
ご希望があれば腹部エコーも同時にしています。
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先日若い女性が胃の不快感で受診され、
他院で胃薬を処方されたのですが改善無く、
当院での胃カメラを希望されました。
胃カメラの予定をたて、
念のためにエコーも受けていただくようにしました。
そして検査当日、
胃カメラの前にエコーをしていたところ、
下腹部で意外なものを見つけました。
最初は何かわからなかったのですが、
よく見るとかすかに動いているように見えます。
それは大きさ3cmの胎児でした。
背筋がぞくっとしました。
エコーをしていなければ、
麻酔を使って胃カメラをしていたところです。
恐らく胎児には何も起こらないのでしょうが、
知らずにお薬を使った罪悪感は残るでしょう。
その方は先日月経が来なかったので、
産婦人科で妊娠のチェックを受けられたそうですが、
その時は反応がなく否定されたそうです。
『若い女性を診たら、妊娠を疑え』
これは医学部の臨床講義で、
一番最初のころに言われることです。
医師となり長い時間が経過しましたが、
忘れていた時に初めて遭遇したのでした。
もちろん胃カメラは中止しました。
なにより原因は胃ではなく「つわり」ですから。
胃薬が効かないのも当然です。
私にとって救いだったのは、
その女性が、
大変喜んで帰られたことでした。
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このようについでに行ったエコーで、
偶然他の病気が見つかることもあります。
膀胱がんや前立腺がん、
卵巣腫瘍もたまに見つかることがります。
もちろんみんな無症状です。
皆さんも何があるかわかりません。
できれば胃カメラをされる機会に、
エコーも一緒に受けてください。