2014年1月27日
大寒が過ぎ、寒さも少しましですが、
体調は如何でしょうか?
インフルエンザの患者さんが急増しています。
当院の職員も2名インフルエンザにかかりました。
皆様もお気を付け下さい。
さて今回は食道がんのお話です。
桑田佳祐さん、小澤征爾さん、
やしきたかじんさん、淡路恵子さんなどなど。
このところ芸能人をはじめ、
多くの有名人が食道がんを患ったり、
それが原因で亡くなったりされています。
胃がん、大腸がんは注意していても、
食道がんについてはあまりなじみのない方も多いと思います。
胃がん、大腸がんに比べると、
病気自体の数が少ないで無理はありません。
しかしこの食道がん一度なってしまうと大変です。
胃がんや大腸がんに比べ、
早い時期からリンパ節転移が起こるため、
治療をしても非常に治りにくい癌だからです。
癌の進行度を表すものに「5年生存率」がありますが、
食道がんの5年生存率は、各ステージごとに
Stage 0 : 78%
Stage Ⅰ: 74%
Stage Ⅱ: 50%
Stage Ⅲ: 34%
Stage ⅣA : 16%
Stage ⅣB : 12%
となっています。
Stageは数が少ない方が早期、大きくなるにつれて進行した状態です。
つまり比較的早いStageⅡで見つかって治療したとしても、
5年後には半数の方が亡くなっているということにあります。
参考として大腸がん(直腸がんを除く)では、
5年生存率は以下のようになっています。
Stage 0 : 94%
Stage Ⅰ: 90%
Stage Ⅱ: 83%
Stage ⅢA: 76%
Stage ⅢB : 63%
Stage Ⅳ : 14%
同じStage Ⅱでも、大腸がんではほとんどの方が治ります。
単純な比較はできませんが、
食道がんと大腸がんでは同じ癌でも重さが違います。
ではこのたちの悪い食道がんを早期発見するには、
どのようにすればよいのでしょうか?
日本食道癌学会によると、
ある程度の深さまで進行した食道がんは、
「詰まる感じ」(39%)や「飲み込みにくい」(22%)など、
大部分の方が有症状で発見されるそうです。
それに対し、早い段階の表在癌と呼ばれるものは、
約60%が無症状で、
検診や他の病気の検査で発見されるそうです。
また表在癌の発見契機は90%が内視鏡検査です。
つまり表在癌を発見するには、
内視鏡検査が必須であるとされています。
この事実から考えると、
症状が出てからでは食道がんはすでに進行しており、
治療可能ながんを見つけるには、
定期的な内視鏡検査しかありません。
それでは、老若男女全員が、
食道がんという数少ない癌のために、
内視鏡検査を定期的に受けなければならないのでしょうか?
もちろん、胃がんの検査で定期的に受ける方は、
一緒に食道もチェックしてもらえるので心配ありません。
逆にどのような方が食道のチェックが必要なのでしょうか?
食道がんのリスクファクターは昔から、
お酒とたばこ、熱い茶がゆと言われています。
特に高齢の男性では食道がんの割合が多くなります。
そこで「食道がんリスク問診票」というものが作られました。
リスクファクターを点数化し、
合計の点数で評価するというものです。
久里浜医療センターの食道がんチェックがわかりやすいので、
一度ご自身で行ってみてください。
https://kurihama.hosp.go.jp/hospital/screening/alcheck.html
ここで注意いただきたいのは、
お酒をたくさん飲む方はもちろんですが、
お酒にあまり強くなく、すぐ顔が赤くなる方も、
飲酒量は少なくてもかなりのハイリスクになるということです。
このことは最近わかってきたことで、
アルコールを分解する酵素が遺伝的に1つしかない方は、
発がん性の高い代謝産物が体内に長くとどまるそうです。
このような方は飲みすぎないように気をつけてください。
食道がんは本当に怖い病気ですが、
あらゆる方になる可能性がある病気ではありません。
リスクファクターのスコアが高い方は十分注意し、
定期的な内視鏡検査をご考慮ください。
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最近私が世話になっている知り合いの方から、
「食道がんってどうやって見つけるの?」
と尋ねられました。
食道は喉と胃の間にある細長いウナギのような臓器です。
当然、「胃カメラですよ」と申しましたが、
「へぇ~食道も見るのですね?」とおっしゃっていました。
胃カメラは正式には「上部消化管内視鏡」というのですが、
確かに胃カメラと言えば、
胃だけを見ていると誤解されてもおかしくないですね。
その方は、医者が当たり前と考えていることは、
必ずしも一般の人には常識ではないのでわからない、
とおっしゃっていました。
大変ごもっともなご意見だと思います。
私もできるだけ皆さんにご理解していただけるよう、
わかりやすい説明を努めていきたいと思っております。