2013年9月17日
昨日は朝5時の「緊急警報」で目が覚め、
窓から少しだけ見える鴨川の増水に驚き、
テレビにくぎ付けになりました。
前日たまたま松尾橋から嵐山に続く、
桂川沿いの道を車で通過しましたが、
その時川の水は普段より少し多い程度でした。
それがたった一夜のうちに、
渡月橋を飲み込む勢いで水量が増し、
南側の中之島は完全に水没していたのです。
その後北側の川と道路の境目もわからなくなりました。
京都に長い間住んでいますが、
こんなに勢いよく氾濫したのは初めて見ました。
同じ町で起きているとは信じられない気持ちでした。
ちょっと思ったのですが・・・、
水没してから避難指示を出しても、
避難できないのではないかと・・・。
また避難先も確保できていたのでしょうか?
京都は普段から地震も台風も少なく、
地盤も人も自然災害に対して脆弱だなと、
改めて思いました。
携帯電話から流れる「緊急速報」は、
設定していない(聞いたことのない)音で、
一瞬どきりとしますね。
また今回のように明け方に鳴るとなると、
びっくり度が増します。
過去の体験が重なるからです。
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外科医だったころ、
病院からの呼び出しはよくあることでしたが、
明け方に呼ばれる時は要注意です。
明け方の呼び出しでよくあるのは、
①救急外来に外科の患者さんが来た。
②緊急手術が決まった。
③受け持ちの末期の患者さんが亡くなられた。
④受け持ち患者さんが急変した。
一番嫌なコールは・・・
④受け持ち患者さんの急変です。
出勤前の早朝に呼び出されると行くことは、
かなり緊急を要する可能性があるからです。
普通に出勤してからでは遅いということです。
ということで、
たいていは電話でのやり取りでは収まらず、
急いで出動します。
受け持ちの患者さんが急変するということは、
術後に重篤な合併症を起こした場合が多く、
非常に気が重い中出かけます。
また病棟についてからは、
必要な検査をしたのち、病状を見極め、
場合によっては緊急手術の判断に迫られます。
そして緊急手術となれば時間との闘いです。
患者さんの家族に来てもらい手術の説明をし、
同意を得られたら、麻酔科医に連絡します。
余談ですが、
当番の麻酔科の先生にも当たりはずれがあり、
悪い先生にあたるとぐちぐち嫌味を言われます。
手術を手伝ってくれる外科医、
手術室の看護師さんなど多方面に連絡し、
ぺこぺこ頭を下げて手術にこぎつけるのです。
でも本当は心の中で一番ぺこぺこ謝っているのは、
これから手術になる患者さんに対してです。
申し訳ない気持ちでいっぱいになります。
緊急手術が始まるころには、
その日の予定手術が始まる時刻になっていたりします。。
その場合は、親切な同僚の助けを借りることになります。
手術室を渡り歩きようやく病棟に戻ればもう夕方です。
指示を受けてくれる看護師さんに、
「遅くなってごめん」といいます。
指示はお昼の3時ころまでに出さなくてはいけないのですが、
同じ病棟の看護師さんはわかっているので受けてくれます。
他の病棟にいくと、当然文句を言われます・・・。
深夜、誰もいなくなった病棟で、
術後の患者さんの病状を確認し、
心電図の音を聞きながらカルテを書きます。
複数の手術をしたときなどは、
患者さんの点滴を眺めながら、
こちらが脱水で死ぬのではないかと自嘲します。
そして・・・、
そのまま翌朝をむかえるのでした(涙)
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これは外科医のあるあるです。
外科系の医師以外はなかなか味わうことのない、
極上のスパイスです。
今回大雨の緊急速報でここまで思い出すのは、
早朝のコールにいい思い出がなかったからです。
今では呼び出されることもなくなりましたが・・・。
それでも私の外科の同僚たちは、
今でもこんな生活を当たり前のように送りながら、
日々重症の患者さんを救っていることでしょう。
私ももっと頑張らなければなりませんね。
そして一夜明け、甚大な被害のあった、
嵐山、福知山をはじめ、各地の被災地の復旧が、
一日でも早く進むことをお祈りしております。